ログインすることは、このゲームでは〇〇と呼ぶ

「オエップ! いっしょに、頑張りましょうね♪」

 青白い顔をして、気分悪そうにしている女の子=ゲップちゃんがゲップを交えて出迎えてくれた。

 入院ボーナス一日目と表示された部分にスタンプが押される。

 背景画面は病室のようだ。

「……この子の体の方が、心配なんだけど」

「このゲームでは、ログインは入院って用語になってるんだ。ログインボーナスのことは入院ボーナス、略してニュウボーだよ。入院ボーナス一日目は強化素材、炎症のゲロが貰えるよ。プレゼント画面で受け取る。を選択すると、アイテムに加わるよ」

「いらねえ、汚ねえ」

 孝則は苦笑いでそう言いつつも、マッチョに言われたとおりにしてみた。

「各属性の鼻くそ、うんこ、ゲロ、心臓の順に獲得経験値が上がっていくよ。レベル1から鼻くそを使うとレベル5までしか上がらないけど、心臓を使うとレベルが一気に26くらいまで上がるんだ」

「心臓だけはまともだな」

「初回ダウンロードボーナス分でも強化素材とコインをたくさん貰えてるから、こいつを使ってレベル1のキャラを便5優先でどんどん強化していこう」

「なんか気が進まないけど、やってみるか」

「第一章のボスは土踏まず属性だから、八重歯ちゃんを強化するのがおススメだよ」

「じゃあ、その子にしよう」

 孝則は強化画面をキャラクター選択画面で八重歯ちゃんを選び、強化素材を使って八重歯のレベルを30まで上げた。他は彼がかわいいと思った便3のキャラを10程度まで上げて、強化素材は尽きた。

「次は里の空き地に生産施設や強化施設、各職業の訓練所を建てていこう。コインは十万あるからとりあえず最低限の施設は建てられるよ。からだポイントはまだ少ないから施設のレベルアップはまだ出来ないけど」

「ここ押せば行けるんだな」

 孝則はホーム画面左上に表示されていた里へ。をタップする。

「最初は小さな空き地が四箇所、大きな空き地が一箇所あるから、武器素材生産所と、コイン量産所、戦士と魔法使い訓練所から作っておくのがおススメだよ。大きな空き地には、各作品の強化施設を建てられるよ。メインクエストの各章クリアごとに里が広がって、施設を増やせるようになってるんだ」

「そうなのか」

空き地と表示された看板のある箇所の一つをタップすると、

「ゲホッ、ゲホッ、勃てたいのか?」

 褐色肌黒髪のお姉さんが画面左に表示された。

「この人も風邪気味みたいだな」

「このお姉さんは名前の通りいつも感冒、つまりインフルエンザを患ってるカンボウさん、カンボウ姉さんの建築屋で施設を作るとキャラのHPやディフェンス、スピードなんかがアップするんだ」

「そんな病弱な人に重労働させない方がいいと思うけど……」

 そう言いつつも、孝則はコイン生産施設を選択した。

 すると、

「待ってろ。勃たせてやる」

 カンボウからこう伝えられ、カン、カン、カンと金槌を打つようなBGMが流れ、数秒でコイン生産施設が完成した。Completeと表示された箇所をタップして、竣工させる。

「コインや武器素材の生産所、各職業の訓練施設はレベルが上がるほど完成までに時間がかかるよ。胆石を消費したら一瞬だけどね。作品施設はレベルが上がっても一瞬で完成するけど」

「そうか」

 孝則は同じようにして、小さな空き地の箇所に武器素材生産所、戦士と魔法使いの訓練所、大きな空き地に入院Gameの作品施設をカンボウに建てさせた。

「まだ買えない物も多いけど、商店街も見てごらん」

「分かった」

 孝則は続いて商店街と表示された箇所をタップする。

 トレードショップ、鍛冶屋、建築屋があった。

「トレードショップから見てみるか」

 そこをタップすると、

「こんばんは、処方箋は?」

 帽子を被った紫髪の少女が画面左側に表示された。

「この子はコマクちゃん、旅商人なんだ。ここで期間限定イベントで収集したアイテムや、からだポイント、胆石なんかと強化素材や進化素材、金運銀運のクエストキー、限界突破素材などを交換出来るんだ」

「この子もかわいいな」

 孝則は思わず顔がにやける。

「今、交換錠剤が二〇粒持ってるでしょ。一粒で各属性の鼻くそ一個交換出来るから、試しに交換してごらん。通常交換の強化素材の所から出来るよ」

「やってみるよ」

 孝則は、強化素材選択欄の一番上にあった炎症の鼻くそを交換錠剤で交換してみた。

 すると、

『後遺症、生理痛』

 コマクがほんのり頬を赤らめて、こんな言葉を発してくれた。

「普通、交渉成立って言うところだよな、ここ」

 孝則は苦笑い。

「コマクちゃんはひどい生理痛に悩んでるからね」

「またも持病ありかよ」

 戻る。を示す矢印を二回タップすると、

『股恋』

 とコマクが見送ってくれて、商店街の画面に戻った。

次に鍛冶屋を選択すると、

『ポルノな鍛冶屋へようこそ。明日の冒険に備えないとな』

 褐色肌で、大きなナイフを持ったオレンジ髪の少女が。

「この子はポルノちゃん、コマクと幼馴染なんだ」

「名前はともかく、ボーイッシュでかわいらしい子だな」

「武器素材は今はまだ足りないけど、メインクエストを進めても手に入るよ。各職業のシンボルの他、ゴリラの毛やハゲワシの爪、鹿の角、蚕の繭、ライオンの牙なんかが武器作成と強化の素材になってるんだ」

「それは動物の体が元になってるんだな。準備中のとこもあるのか。気味の悪い目玉が屋根に乗っかってるとこ」

「そこは近日実装予定のトレーニングだよ。元戦士の癩寝お姉さんが優しく指導してくれるんだ。課題をこなすとキャラクター経験値やアイテムなどがGet出来るんだよ。次はルームにキャラを設定してみよう」

「里やホーム画面にルームって書かれてた箇所か」

 孝則は里画面に戻らせ、ルームの『入る』をタップする。

「ルームショップで家電や家具、雑貨などを購入出来て、自分の好きなようにコーディネイト出来るよ。まずは好きなキャラを入居者に設定しよう。ルームレベル1、2では、最大五人まで配置出来るよ」

「それはいいシステムだな」

 孝則は、入居者一覧の項目から、初回ガチャで引いた十キャラのうち、かわいいと思ったキャラ五人を入居者に設定した。

 続いて、ルームショップを選択し、金魚鉢やソファ、本棚、テレビ、自販機、熊のぬいぐるみを購入し設置した。

「ぴょんぴょん跳ねたり、さっき置いたアイテムに反応したりとかわいいな。ずっと眺めても飽きなさそうだ」

「スケジュールで里に出ている時間もあって、その時にキャラをタップするとからだポイントが得られてスタミナ回復も出来るようになってるんだ」

「このゲームのシステムは大方分かったよ。初クエストしてみるか」

 孝則は今、わくわく気分でいっぱいだった。このソシャゲが気に入ったようだ。

「ちょっと待って。その前に、きみもエロワリアに来てみないかい?」

「えっ! 俺も行けるのか?」

「うん、ぼくがここに来れたんだし。さあ、おいで」

「うわぁっ!」

 マッチョは孝則の腕をぐいっと引っ張り、スマホ画面に飛び込むと共に孝則も引きずり込んだ。

 次の瞬間、マッチョと孝則は商店街と書かれた看板の前へ降り立った。

「俺、本当にゲームの中に入れたんだ。それにしても、マッチョ、凄い力だな」

『からだファンタジア』の中の世界、エロワリアへとやって来たのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る