第4話 決心

田中「ほんとさー、あのクソ上司どうにかしないとみんなやんなっちゃうと思わない?」


蓮「クッソ分かります!これから入ってくる新人が可愛そうっすよね」


田中「誰かこうビシッと言ってくれないかなー」


蓮「確かに。。。まあ誰か言えるならこんなことになってないですよね。。。」


田中「マジそれな」


時刻は22時半、一軒目なのにも関わらずもう二人は出来上がっていた。

今思えば田中さんと飲む日は毎回愚痴ばかりだった気がする。


田中「本当蓮君と飲むとスッキリするから良いわー」


蓮「俺もこんな本音言える先輩と出会えて幸せです」


田中「褒めても何も出ないよー?笑」


蓮「そんなこと端から期待してないんでご心配なさらず」


田中「このー、生意気後輩が!それそれ!」


蓮「いたっ!地味にスネ蹴るのやめてください」


田中「あー、痛かった?ごめんごめん」


蓮「この人は全く。。。」


とは言いつつ、蓮はそんな何気ない楽しいじゃれ合いさえも楽しかった。


田中「よーし、もう一軒行くぞー!!」


蓮「え、もう23時半っすよ?今から二次会行ったら終電逃しますよ?」


田中「いいのいいの!今日金曜日だし、最悪彼氏に迎えに来てもらうわ」


蓮「そんな身勝手な。。。面倒見るのはごめんっすよ」


完全に田中さんは泥酔していた。

蓮も割と酔っていたので、流れで二次会に行くことになった。


今思えば、この時帰っていればあんな出来事にならなかったのかもしれない。



二軒目は田中さんお気に入りのバーに二人は向かった。


バーに着いて田中さんはカシオレ、蓮はビールを頼んだ。


田中「蓮君って本当ビールしか飲まないよね、もっと日本酒とか飲めば良いのに」


蓮「カシオレで泥酔している田中さんには言われたくないです。」


田中「ねえ、私のこと一回で良いから真矢って呼んでくれない?」


蓮「急に何言ってんすか??」


田中「いいからいいから!一回だけ!ね、お願い!」


蓮「何なんすか。。。真矢」


田中「なあに?蓮〜」


蓮「マジでなんなんすか。。」


田中「だって〜蓮といると何か安心するんだもーん」


蓮「はいはい、可愛い可愛い。もう帰りましょ?」


田中「ねぇ、蓮君。キスしない?」



突然の田中さんのセリフに蓮は動揺した。


蓮「何言ってんすか?そもそも田中さんには彼氏がいるじゃないですか」


田中「今どうせいないからいいのー!ねぇ〜キスして〜」


蓮「いないなら何しても良いんですか?それって何かおかしくないですか?」



蓮は彼氏がいるのに他の男にベタベタするのが理解出来なかった。



田中「え〜、皆こういうことやってるよ?たまには息抜きも必要なの〜。ねー、良いでしょ?しようよ〜」



蓮は絶望した。信頼していた田中さんでさえも自分の欲求に埋もれ、堂々と彼氏を裏切る行為をしたことに。



蓮「俺、やっぱ帰ります。もう終電近いんで彼氏に迎えに来てもらってください。多分一人だと危ないんで。」


田中「えー、ちょっと待ってよ〜蓮君ー」



蓮はそそくさと身支度を整えて、田中さんの代金も店側に払って店を出た。


帰り道、街ではイチャつくカップル、女性を口説く男達の姿を見た。

彼らを睨みながらこう呟く。



「こんな欲望に塗れた世界、無い方がマシだ」



蓮はある決心を固めるのだった。

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