008

今日はギリギリじゃなくて、普通に間に合ったな。

僕は教室の席について一息つく。

ベルのことだから今日も付いてくるとか言ってくるかと思っていたんだけど、なんでも服を買いに行きたいとか、用事があるとかで学校に一緒には行かないとのことだ。僕としてはついてこなければそれはそれでいいんだけど、目の届かない所にいかれるのもなんだか不安でしかたない。だったらいっそのこと一緒にいてくれたほうがまだマシだったかもしれないな。それにしても今日はなんだか教室内がザワザワとしている気がする。心なしか僕を見る目もいつも以上に冷たいような・・・。

「結城君!!ちょっと!」

飯田が慌てた様子で僕の所へやってくる。

「どうしたの?ていうかなんか今日、教室のふいんきがおかしい気がするんだけど」

その言葉を聞いて飯田は呆れたような顔をする。

「どうしたのじゃないわよ。昨日って保健室から直接帰ったの?」

「え?まぁ、そうだけど・・・」

「その時に保健医の先生は保健室にいた?」

「えっとー、たしか・・・先生がいなくなってすぐくらいに保健室を出たから・・・出るときにはもういなかったと思うけど」

そう聞くと、飯田は安心したような顔でうなだれる。

「そっかー、じゃあやっぱり結城君じゃないっぽいねぇ」

「僕じゃない?・・・ってどういうこと?」

「あー、まだ聞いてないんだ・・・。たぶん先生から言われると思うけど、昨日ね・・・」

飯田が言い終わる前に遮るように声が聞こえる。

「おーい、結城!!生徒指導室までちょっと来てくれるかー」

生徒指導の先生が教室の入口から僕を呼んでいるようだ。それを聞いた周りの生徒がさらにザワつく。うっすらと周りから聞こえる。

(あー、やっぱり結城が犯人なんじゃね?)

(あいつだけアリバイがないっぽいもんなぁ)

僕が犯人!?なんのことだ?とりあえず先生の所にいってみよう。

「ちょっと!みんな!!結城君が犯人のわけないじゃん。憶測でものを言ったら結城君に失礼でしょ。」

飯田にも聞こえていたのか、僕を庇うように周りに声を掛ける。同調するように深山も言う。

「そうそう、結城は昨日かなりヘバってて歩けないくらいだったんだぜ?その姿はかなりウケたけどな。あの状態ならあんなことできないって。」

「だけど・・・あの時間授業にいなかったのは結城君だけなんでしょ?」

周りの生徒が深山に詰め寄る。

なにが起こっているんだ!?状況が全く呑み込めない。

深山がとりあえず早くいけっと僕を廊下へと押し出す。

「大丈夫だ。ここは俺に任せておけって。なんもしてないなら堂々と指導室に行って来いよ」

小声で僕にいう深山はそのまま教室の生徒に説明を始めたようだ。僕は今はここにいないほうがいいのだろう。さっさと生徒指導室へ行って何があったのか聞かなきゃな。

コンコン・・・。軽くノックをしてみるが反応がない。

「・・・・失礼します」

そう言って僕は生徒指導室へと入った。

「お、来たな。結城・・・まぁ、座れ」

「あ、はい。」

待っていたのは、担任の先生ではなく2年生のクラスを受け持っている先生だ。あまり見たことはないのだが、たまに臨時の授業で僕たちのクラスにきていたはず・・・。

「えっとな、結城。お前は昨日の事件について聞いているか?」

「え?・・・事件ですか?ちょっとよくわからないんですが」

「わからないか・・・確か、早退したんだったか?紙が提出されていたんだが・・・どうだ?」

「そうですね、体調を崩してしまったので保健室で休んだあとそのまま帰宅しました。」

僕はきっとなにか疑われているんだろう。これじゃまるで取調べだ。

「そうか、昨日な・・・2年生は課外授業があって外でみんなが待機していたんだよ。その時に空からシュレッダーが落ちてくるっていう事件があったんだ」

「ええええ!!?」

「幸いなのか生徒に怪我はなかったんだが、保健医の先生にその破片が刺さってしまって、今入院しているんだよ」

「え?保険医の先生って・・・あの?」

「そうだ。お前は保健室で休んでいるときに保険医の先生と会っているんだよな?そのときになにか変ったことはなかったか?」

「変わったこと・・・ですか?」

「そうだ。なんでもいいんだが、どうだ?」

変わったこと・・・、昨日は確か、課外授業に引率するっていっていなくなって・・・。

「特にはないと思いますが・・・。」

「そうか・・・よし、わかったぞ。じゃぁ、教室に戻ってもいいぞ。」

「・・・はい、わかりました。」

僕は指導室から出ようすると・・・。

「あ、そうそう、ここで聞いた話は周りには言うんじゃないぞ?余計な不安が広がっても困るからな」

「・・・わかりました、失礼しました。」

シュレッダーが落ちてきただって?それが保険医の先生に当たって・・・入院・・・。そして、その犯人の容疑者が僕!?なんだってそんなことになっているんだ。確かに僕は教室にいなかったし、誰にも見れれていない空白の時間があったのかもしれない。だけどなんでそんなことをしなくちゃいけないんだ?動機がまったくないだろう。・・・なんて思ったって動機があるないは周りにはわからないことだから、疑われてしまうのは仕方ない・・・のか。でも、そういえば飯田だってあの時教室にいなかったんじゃないのか?なんで飯田は疑われてないのに僕だけ?そんなことを考えながら教室へとたどり着いて席につく。教室では授業の真っ最中だったが、先生もすでにわかっているのか何も聞かずにそのまま授業を進めている。なんなんだよ、まったく。周りの目も相変わらず冷たいままだ。こうなったら身の潔白を証明しないとただことじゃ済まないかもしれないな。ていうか、なんでこんなときにベルがいないんだよ。ベルがいてくれればどうにかこうにかなりそうなもんなんだけど。モンモンと考えていたらいつの間にか授業は終わっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る