006

目が覚めると僕は保健室のベットで寝ていたようだ。確か・・・ベンチの前でベルに・・・?

「ベル!!!」

慌てて周りを見渡すが、そこにいるのは深山だけだった。

「おいおい、ベル?ベル・・・ベル・・・ベル?」

深山が何寝ぼけてるんだとパシっと僕を小突く。

「深山・・・か?僕は・・・」

ベットから降りようとするが体が思うように動かない・・・起き上がるのがやっとだ。

「おいおい、大丈夫かよ。様子を見にいってみたら結城がぶっ倒れていたから、俺がココまで運んできてやったんだぞ?」

「あ、そう・・・なんだ。ありがとう・・・悪いな。」

僕がそういうと深山は少し驚いたようだった。

「お、おう・・・。こういっちゃ難だが、結城って意外に普通なんだな」

「普通?」

「お前って周りとあんまり関わらないようにしてる感じだったから、正直ナルシストでも気取った変人だと思ってたわ。」

「ナルシストって。」

ついつい笑ってしまう。

確かに僕はよく話掛けてくる飯田以外とはあまり話をしたことがなかった。

「飯田もナルシスト結城にガンガン話し掛ける変わりもんだと思っていたが、なんだか勘違いだったようだな。」

「ナルシスト結城・・・」

「お前も普通の人間だってことがわかればこれからは普通に話しかけられるわ。」

「あ、ああ、よろしく。」

深山は僕が気が付いたことを先生に知らせておくと言って、保健室を出て行ってしまった。まったく・・・それにしてもベルはどこにいったんだろう。食事っていきなり魔素の吸出しなんて始めて・・・そのせいで気まで失って。

「ベル・・・いないのか?僕は別に怒ってないからいるなら出てきてくれよ」

反応はない・・・。この部屋にはいないのかもしれない。そう思うと、ベットにどっと倒れこむ。あの時ベルはイライラしているようだったな。僕と飯田がいちゃいちゃと話しをしているのが気に食わなかったのだろうか。いや、腹が減っていただけだろう。なんかそんなこと言っていたような気もするし。少しづつだけど体のほうも回復してきているようだし、もう少し休んだらベルを探しにいかなきゃな。

・・・・・・。

コンコン・・・ガラガラッ。

「あれ?結城君、起きてるんだね~。倒れたって聞いたから様子見にきたよー」

飯田が笑いながら保健室へ入ってくる。

「あー、いいよいいよ。寝たままで~。」

ベットの横に椅子を持ってきて当たり前のように座る。笑顔の割には少し顔色が悪いかな?

「どうしたの?」

「結城君こそ急に倒れたりなんてどうしたの?」

「僕は・・・そう、急に貧血みたいな感じで・・・ね。昼も飯田からもらったおにぎりだけだったし。」

まさかベルにやられたなんていうわけにはいかないよな。

「・・・貧血かぁ。」

飯田はなにか言いづらそうにしているが・・・。だんだんと顔色が曇って・・・。

困ったな。

「そうそう。僕はこう見えて肉体派ではないからね。」

できるかぎりの笑顔で言ってみるが・・・。

「私の・・・おにぎりのせい・・・かな?・・・。」

やっぱりそこを心配していたか。困ったな・・・まったくそんなことはないんだけど、どう説明したらいいものか。

「いやいや、それは全然関係ないから、ほら、僕、お昼ご飯食べ損ねたじゃん。やっぱりおにぎり1個じゃ足りなかったかなぁ」

どうだ!?飯田の反応をみる。

「・・・そうなの?」

「そうそうそう、そういえばお弁当も教室に置きっぱなしだし。どうしよっかなぁ。」

「そっかぁ、それならよかったぁ。」

ふぅ、なんとかごまかせたかな?飯田も普通に戻っているみたいだし。

ガラガラ・・・。

誰かが入ってきた。ふと目をやると保健医の先生だ。

「あら、誰かきているのかしら?」

「あ・・・先生。」

飯田がやばいと言わんばかりの顔している。

「あれ?なんで他の生徒さんが保健室にいるのかしら?今は授業中でしょ?」

「授業中?」

時計を見てみると5時限目の授業の真っ最中だ。飯田は授業を抜けてきたのか!?あー、間違いないな・・・やばいって感じがモロに出ている。

「あー、私もそろそろ教室に戻らなきゃなぁ。結城君、お大事にねー。」

飯田は逃げるようにそそくさと保健室を出て行った。保険医の先生も呆れた顔で見ている。これって僕が悪いわけじゃ・・・ないよね?

「でー、結城君・・・だっだかな?彼女と保健室で何をしていたのかな?まさか・・・変なことしてたんじゃぁ」

「なんもしてませんよ。今も起き上がるのもやっとなんですから・・・」

「そう?それならいいのだけれど。」

疑いが晴れているわけではなさそうだがとりあえず追求はされないようだ。

「で、どうなの?具合は。」

「あー、だいぶ良くはなってきてますけど、もう少し休んだら今日はこのまま早退しようかなと。」

「そうね、顔色も良くなったみたいだけど、念のため早く帰って病院にいったほうがいいわ。あなた、ここに運ばれてきたときだいぶ真っ青だったから」

そうなんだ。ベルのやつ・・・手加減抜きでがっつりと吸い上げていったんだな。

「クラスの先生には私から言っておいてあげるから、そこの紙に内容を書いて、もう少し休んだら帰りなさい。・・・あと、はい、これ。」

そういうと、保険医の先生は僕のカバンを出してくれた。

「たぶん、早退することになると思ってあなたの教室から持ってきておいたのよ。」

「・・・ありがとうございます。」

そんなに僕の状態は悪かったのだろうか・・・。

「じゃぁ、私はこのあとの課外授業に引率しなきゃいけないからいなくなるけど、帰るときは紙に記入を忘れないでね。」

「あー、はーい」

保険医の先生は保健室から出て行ってしまった。うーん、あれか?忙しいから早く帰したかったのかな?まぁ、なんでもいいか。体もだいぶ動かせるようになってきたし、荷物もある。とりあえず他の先生に見つかる前に学校をでよう。


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