004
キーンコーンカーンコーン
午前の授業がやっと終わった・・・。僕は勉強自体はそんなに嫌いではなくむしろ集中して取り組むっていうのが性に合っているようで成績自体もどちらかと言えば良いほうだ。だけど、今日に限ってはまったく集中ができない・・・。ベルが学校がもの珍しいのかあちらにふらふら、こちらにふらふらとうろつくものだからなんだか気が気じゃない。ベルは約束ごととして他の人に絶対にばれないようにすることと人がいるところで僕にちょっかいを出さないことになっている。ばれないようにするということは見ている限りだとまったく問題ないように見える・・・。人に当たりそうになればふわふわと宙に浮いて上手に避けているようだし、ちょっかいを出さないっていうのも、まあ・・・わかっているようだ。
「結城くん、今日は全然集中できてなかったんじゃない?」
不意に声を掛けてきたのは、うちのクラスで学級委員長を任されている飯田 果歩。清楚で真面目、その上頭も良く可愛いとそろい踏みだ。僕は編入してこのクラスに来てからというものあまり周りに馴染めずにいるんだけど、飯田委員長はそんな状態を見かねてよく話しかけてきてくれる。さすが、学級委員長だ。
「いや・・・、そんなことないよ、委員長。これでもか!っていうくらい勉学に精をだしていたさ」
「そう?なんだかあっちみたりこっちみたりって、まるでなにかを追いかけてるようだったじゃない」
「委員長・・・よく見てるね。委員長こそ、集中できてないじゃん。いけないね、そんなんじゃ。」
「ちょっと、結城くん。だから委員長って呼ぶのはやめてって言ってるでしょ。」
「え?だって委員長は委員長じゃん。」
「そうだけど・・・そうね、名前で呼んでくれてもいいんだけど。ほら、周りの友達だってみんなそう呼ぶし。私のこと委員長って呼んでるのは結城くんくらいだよ?」
飯田委員長はきっとなんとかして僕をクラスに馴染ませようと必死なんだろう。僕は別に構わないんだけど外から見ればクラスでぽつんと友達がいない、いじめられっこと見られかねないから、学級委員長として担任の先生にでも言われているのかもしれない。
「わかったよ、委員長・・・じゃなかった、飯田・・・さん」
「・・・飯田って、・・・名前って・・・言ったのに・・・」
ぼそぼそっと飯田がつぶやく。
「ん?あ、ごめん、聞こえな・・・」
「おーい、果歩ー。おひるいくよー。」
僕の声を遮るように飯田を数人の生徒が誘いに来たようだ。さすが委員長。そろい踏みのスペックがありながら、友達までいっぱいときたらいうことないね。僕とは大違いだ・・・。
「あ・・・じゃあ、またね、結城くん」
「お、おう」
そういって飯田は友達と教室から出ていった。ふぅ、と一息ついたら、ふと気付く・・・。あれ?ベルはどこにいったんだ!?周りを見まわすが見当たらない・・・。他の人に聞こう・・・としてもベルの存在にはまったく気付いていないんだから聞いたところで無駄か。と思ったところで気が付いた・・・。この僕の現状ではベルの存在に気づくことはできるのだろうか?すでに一度意識から外してしまったあと、再度認識するにはどうすれば・・・。本当はベルが目の前にいてただ僕自身が気づけていないだけなのかそれとも・・・。
「ベル・・・近くにいるのか?」
恐る恐る小声で呼んでみる。反応は・・・ない。どうしようかな・・・。そんなことを考えていたらふと誰かに見られているような気がする。
「お前、すごく睨まれているぞ」
ベルが急に背後から抱きついて耳元で囁く。僕はビクっとしながらも周りを見渡そうとしたが。
「ほら、キョロキョロするな。あいつはワタシには気付いていないからこっちから姿が丸見えだ。」
「ベル・・・どんな感じの人が僕を睨んでいるの?」
女の子なら大歓迎なんだけど、きっとそうではないだろう。実のところ、ここ数日誰かに見られているような気がしていて・・・その時は女の子ではない感じだったからね。しかも、睨まれてるって・・・。気になって見ている程度だろうとおもって気にしてなかったんだけど睨まれてるとなると話は別になってくる。
「そうだな・・・男の人間で・・・」
やっぱりかぁ、女の子になら最悪睨まれてもまだなんかよかったんだけどなぁ。
そう思い、おもむろにベルの視線の先を見ようとすると・・・。
「あーあ、逃げていったぞ・・・」
ベルがなんで見ようとしてるんだと、じゃれるようにヘッドロックをしてくる。
「あー・・・、ごめんごめん・・・って・・・」
まるでじゃれているカップルのような感じでなんともいえないのだが・・・そんなことはさておき、ベルの胸が僕の背中に当たっている。ベルの体は僕の妹が僕ぐらいまで成長したときの体になっているはず・・・ということは、高校生にまでなればなかなかのなかなかな感じになれていたんだなぁ。さすがに僕はシスコンというわけではないので妹の胸が当たっているくらいで一喜一憂したりはしないのだが、女の子と今までに付き合ったこともないわけで、この背中に感じる柔らかさというのはとても新鮮である。
ぐぐぐ・・・もっと絞めてっといきたいところだが、視線の男を追いかけるようにベルが走りだしたので仕方なく僕もついていくことにした。もう少し、そのままでもよかったのに・・・。
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