002
「な・・・なん・・で?」
僕は驚き・・・というよりはあまりの出来事に恐怖すら感じた。妹は間違いなく死んだ。葬式で火に包まれて灰になり、墓も作られてそこに埋めた。それは間違いなくあったこと。だが、今ここに妹がいる。
「美羽・・・なのか?」
僕は恐る恐る尋ねる。
「おにいちゃん、ワタシのおっぱい触ったでしょー、えっちなんだからぁ。もう」
「・・・・・・。」
「・・・・・・?」
「・・・ワタシ?」
確か美羽は自分のことを美羽と名前で呼んでいたはず・・・。あれ?まさか・・・
「ベル・・・なの・・・か?」
「なんだ!もうバレてしまったか。つまんない男だな、お前は。」
「はあ!?なんでベルが僕の妹と同じ姿をしてるんだよ。」
口調はベルそのものなのだが声は美羽にそっくりだ。・・・いや、よくよく聞いてみると若干大人びているか!?体つきも死んだ時に比べて成長しているような気がするような。
「なにをジロジロみているんだ。気持ち悪い。」
美羽の声と姿で気持ち悪いだなんて言われるとかなりの衝撃を受けてしまう。いやいや、今はそれどころじゃないぞ。なんでこの姿なんだ!?たしかに寝る前に動けるようにしておくって言っていたよな。だけど動けるようにしておくって、なぜ死んだ僕の妹?考えれば考えるほどに混乱していく・・・。ていうか、裸!?裸じゃん。ベルは美羽の姿で恥じるわけでもなくその裸体を晒している。美羽が死んだのは2年前・・・13才の頃でまだ中学生だったはず。僕は今は高校1年生の16才・・・ベル、いや、美羽の体付きを見る限り中学生っていう感じではないよな?そもそも女の子の裸なんてそんなにみたこともないから比較のしようがないのだが。
「ベル・・・とりあえず・・・。」
「なんだ?」
「とりあえず、服を着てくれ!」
「ん?お前が見なければ良いではないか、まったく面倒くさい。」
そう言うとベルはシーツを纏いウロウロと服を探し回っている。言ったはいいものの思えば、女ものの服なんて僕の部屋にあるはずはない。
「服を着ろと言ってもなにを着ればいいんだ?ワタシが着れるようなものはないではないか。」
「じゃあ、僕の服を・・・」
適当に見繕ってベルへと渡すと、えーーっと言わんばかりのリアクションで渋々着替えている。
「そういえば、なんで美羽の姿なんだ?昨日の話の嫌がらせか!?」
「美羽?誰だ、それは」
着慣れない服を試行錯誤しながら答える。
「誰って・・・、その姿・形はどうやったんだよ。」
「ああ、これはな、昨日お前が寝ている時に見ている夢の中を覗かせてもらったんだ。その時にお前と仲の良さそうな娘がいたからそれを真似させてもらった。」
夢を覗いただって!?ベルはそんなことまでできるのか・・・。ということは、泣きじゃくってた姿も見られているんだろうか。
「お前とずいぶん親しくしている娘がいたからそれを選んだんだが・・・そうか、例の妹だったのか。・・・まあ、悪気はなかったのだが・・・。嫌なら土へと返すが・・・。」
「ああ、いや・・・。いいよ。そのままで・・・。」
「・・・そうか。」
美羽の姿を見るのは思い出してしまってつらい部分もあるんだけど、土に返すっていうのはまた、殺してしまうみたいで嫌だったというのが一番に思うところだ。
「・・・だけど、美羽はそんなに成長していなかったはず・・・なんだけど。年齢的にも僕と同じくらいって感じがするんだけど。」
「当然、お前より小さくか弱い体などまっぴらだからな。少しばかり成長した状態にしてみたんだ。」
「成長・・・?」
「そうだ。さしずめ本来は絶対に見ることができなかった妹の未来の姿というやつか。」
美羽の未来の姿か・・・。可愛いな・・・、それに体付きは相当・・・。
「なにをジロジロみているんだ。」
「あ、いや、ごめんごめん。そうか・・・美羽が僕ぐらいになったらこんな感じなんだね。」
なんだか嬉しいような、恥ずかしいような。・・・美羽・・・。
「体といってもとりあえずは塵と土で形を作っているに過ぎないからな。改変をもっと強くかければより人間らしく姿を作ることができるが今はまだこれで十分だろう。」
「そうなんだ・・・」
魔法っていうのは本当に便利なんだな。塵と土で外見だけでもこんなにも人間の姿を作ることができるなんて。やっぱりベルはこっちの世界の存在じゃないんだなと改めて実感する。
「・・・あ!」
「どうした?」
「そろそろ支度しなきゃ。」
僕はそそくさと支度を始める。思えば今日は朝から驚かされることばかりだけど、大変なのはむしろこれからだ。学校にいかなきゃいけないのだが・・・。
「ワタシも一緒にいくぞ。」
「は!?」
「ワタシも一緒にいくぞ。」
「無理。」
「ワタシも勝手に一緒にいくぞ。」
「・・・・・・。」
「何のために人の姿を作ったとおもっているんだ。」
「何のために人の姿を作ったんだよ?」
「学校にいくためだ!!」
これはもう行く気満々だな。どうすりゃいいんだよ。学校っていきなり行けるもんだっけ?
「いきなり知らない人が学校についてきたら変な感じになるから無理だって、制服だって持ってないし。」
「制服?そんなものいらないだろ。」
「いや、いるよ!」
「なにが不満なんだお前は。仮にワタシがついていこうがいくまいがお前にはさほど関係ないだろう。」
関係ない・・・関係ないのだろうか?僕はベルのなにかを手伝うことを理由に魔法を少しだけど使えるようになった。だけどそれ以外は関係のないものなのだろうか?いや、それは違うだろう。
「関係はある!ベルは今は僕の妹だ!!」
「・・・・・・ワタシはお前の妹ではない。」
確かに・・・厳密に言えば妹の姿をしているだけなんだが・・・。
「わかった、わかった。要は周りが気づかなければいいのだろう?それであればワタシもついていっても問題ないな?」
「・・・まぁ、そうかな?でも、そんな・・・」
僕が言い切る前にベルが人の言葉とは到底思えない音をつぶやくと一瞬光に包まれる。そして、その光はあっという間に消えた。
「なにを・・・したんだ?ベル・・・」
ベルはいつものようにクククっと笑っている。すると・・・ピンポーン・・・。玄関のチャイムが鳴る。あ、ベルがさっきなにかしたのか!?・・・いや、違う。思えばこの時間は・・・。
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