2ページ

「実は、片思いの相手から告白されたんですっ」

「告白っ!? わぁ素敵じゃないですか!」

「ふふふふふふ!」

 アンさんは照れ笑いを爆発させて、両手で顔を隠しながら小さく左右に体を揺らす。全身から幸せオーラを振りまいているようだ。

 誕生日に片思いの相手から告白されるなんて、どんなに素敵なプレゼントだろうか! 少女漫画か! すげぇ! なにより相手の男すげぇ! 乙女心鷲掴みか!

「ずっといいなって思っていて、でも意気地なしだから自分からは告白できなかったんですけど、向こうも私のこと、好きだったみたいで。こんな夢みたいなこと、本当にあるんですね!」

「ふふ、本当にあるんですね」

「ふふふ、こんなプレゼントをもらったのは初めてですっ」

 アンさんの顔は満面の笑み。素敵でハッピーな誕生日を迎えられたようで、こっちまで幸せを分けてもらったみたいだ。

「あ、でもマスター、笑わないでくださいね?」

 アンさんは急にトーンを下げて言った。

「笑う? どうしてですか?」

「だって、良い歳したアラサーなのに、告白されたくらいでこんなに舞い上がっているんですから」

「ふふ」

 あ、ごめん笑っちゃった。でも、そんなことを心配そうな顔で言うから、仕方ないじゃない。

「笑いませんよ」

「本当に?」

「もちろんです」

 微笑みこそすれ、笑うなんてナンセンス! 恋する乙女はいくつになっても可愛いのだから。

「今度は彼氏さんといらっしゃって下さいね」

「ふふふ、はいっ」

 ほら、満開の花みたいに微笑むのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る