冬空の花束

filare

第1話

自転車を飛ばして、私はただ霧の霞む一本道を走っていた。


凍てつく風が私の頬を撫で、涙が急速冷凍されて零れ落ちていく。


指先の感覚は最早消え去っていて、それでも辛うじて涙が滴り落ちたのがわかるほどだった。


頭の中にはこの霧の空と同じくらい空っぽな空間があって、この風と同じような何か冷たいものがひたすら駆け巡っていた。



それが、世間一般で「希死念慮」と言われるようなものであることを、私はふと気づいた。


死にたい、消えたい、もう何もかも嫌だよ……。


そんなありきたりな言葉が、涙とともに流れては消えていった。

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冬空の花束 filare @filare

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