第130話 王都奪還
「こ、ここは・・」
「城が・・あそこに!」
獣人の戦士達が騒然となりながらも、ラオン王子を護るために前に出て防陣を築き始める。
何しろ、周囲は魔物だらけだった。
かつて、王城を包囲した時のように、びっしりと大地を埋め尽くしているわけでは無いが、ざっと見える範囲だけでも数千という数が確認できる。獣人の戦士達が青ざめたのも無理は無い。
やっとの思いで、ラオン王子を脱出させたというのに、再び、魔物のど真ん中へと舞い戻ってしまったのだ。それも、身を隠す場所の少ない平原に・・。
「・・風刃」
俺は右手を振り払うようにして、前方の魔物の群れに向けて風刃の魔法を撃ち込んだ。
放射状に地上すれすれを不可視の刃が斬り裂き、切断された魔物達が苦悶の叫びをあげて大地へ散乱していく。
「煉獄・・」
リコが東側を、
「一文字っ!」
ヨーコが西側を、
「・・影矢散雨」
エリカの黒矢が南側へ降り注ぐ。
そして、
「ホォォーーーリィーーーー コメットォーーーー」
サナエの掛け声と共に、遙かな前方に見える王城めがけて、純白に輝く球体が降り注いでいった。
呆然を通り越して、ほぼ魂を失ったような顔で獣人の戦士達が立ち尽くしている中、
「ペルーサ!」
「ギンジロウぉ~~」
「アーク!」
「ライデンく~ん!」
少女達が自分の銀龍を呼んだ。
待つほども無く、遙かな上空から巨大な飛影がとてつもない速度で急降下してくると、ふわりと重さを感じさせない動きで地上すれすれに停止しつつ舞い降りて来た。
「騎乗」
「はいっ!」
4人が身軽く跳んでそれぞれの銀龍の後頭部に取り付けた鞍へと跨がった。
俺も、ラースに乗った。
「王城からの攻撃に注意しつつ、周辺10キロの魔物を掃討する」
「はいっ!」
「オリヌシ、ここは任せる」
「おうっ!任された!」
オリヌシが大剣を担いで破顔した。
「よし・・」
俺はちらとラオン達を見た。眼と口が開きっぱなしで、呼吸も忘れた様子だった。
「まあ・・慣れろ」
俺は苦笑しつつ、ラースに命じて上空へと駆け上がらせた。
少女達の銀龍がふわりと舞って高度を揃えてくる。
「先生」
リコが声を掛けてきた。
「私達4騎で密集して、この子達の雷息で地上を灼き払うのはどうでしょう?」
「そうだな・・うん、それが良い。やってみてくれ」
「はい!」
リコが頷いて、他の3人に身振りで報せる。
すぐに、4頭の巨大な銀龍が横一列になった。
全員が振り返ってこちらを見る。
「魔人の不意打ちに気をつけて行け」
「はいっ!」
揃った返事を合図に、大翼を拡げた銀龍が横一列になって地上めがけて急降下をしていく。途中で龍首を持ち上げるようにして地上と水平に飛翔しながら、眩い雷撃の奔流を噴射して魔物達を打ち斃す。4騎が揃って放つ雷撃は、まるでひと繋がりの巨大な雷撃のように拡がって地表を灼き払っていった。
雷の輝きを見て、ラースがうずうずと足踏みをするように動かすが、
「まあ待て」
俺は、神眼・双を起こしたまま周囲をゆっくりと見渡していた。
わずかな異変、違和感も逃さないように、体中の感覚という感覚を研ぎ澄ませている。
王城に少し動きが見られる他は、"悪魔"の存在は感じられなかった。
(・・でも、どこかで見ているだろう?)
魔人と一緒に居るというより、魔人と獣人の戦いを見ていた感じだ。もっと言うなら、魔人に追い詰められたラオン達を見ていたのかもしれない。あの"悪魔"が直接手出しをしていれば、ラオン達はとっくに屍になっていただろう。
(手は出さずに、ただ眺めていた・・ということは)
王都を攻めた魔人とは別の勢力かもしれない。魔人の世界でも勢力が一つとは限らないだろうし、王のようなものも沢山いて、あちこちで勢力争いをやっている・・かもしれない。
(魔族領というのが、魔人の世界とは限らないよな?)
別の所から来たとか?あいつらが侵略していった場所が魔族領になった?
(あいつは・・ヴィ・ロードは混沌の主だと名乗った・・・混沌?俺達が魔族領と呼んでいる場所が、混沌?)
世界全体の事など考えた事も無かったが・・。
冒険者が酒場で肴にしているような "勇者が魔族領へ行って魔王を倒し、綺麗なお姫様と結婚してめでたし、めでたし・・" という絵物語とは何か根本が違う感じがする。
(・・出て来たか)
占拠された王城から魔人らしい気配がいくつか出て来たようだ。4騎編隊で、派手に地表を灼き払っているリコ達に向かっている。魔物などを連れず、魔人達だけで出て来たようだった。
(数は・・13・・いや)
上手に気配を消した奴が1人。
後続は無い。
「ラース」
俺は細剣の先で進む方向を指示した。
うずうずと、走り出したくて仕方が無かった銀毛の魔獣が大気を蹴りつけるようにして疾走を開始した。
狙いは、気配を断って少女達の後背へ回り込もうとしている魔人だ。
グングンと躍動しながら加速していくラースの襟元で、俺は引き裂ける大気の音を聞きつつ、前方を神眼・双で凝視していた。わずかでも視線を外すと見失いそうな、ほぼ透明に姿を変じた魔人が空中をするりと漂うように移動している。
形そのものが変容するようで、捉えどころの無い輪郭をしていたが・・。
(中心の熱だけは見える)
ラースとは違って、完全に消えるのでは無く、単に色を消して、呼吸音や心音などを抑え、極力気配を感じさせないという技能らしい。
派手派手しい銀龍に気を取られ、遙かな上方から急接近してくるラースと俺には気づけないでいる。
あと50メートルというところで、ようやく何かを感じたのか、透明な魔人の体表に無数の目玉が浮かび上がった。数百という目玉が、一斉にキョロキョロと周囲を見始めていたが・・。
(・・遅い)
俺の細剣技:細剣技:7.62*51mm が眼という眼を狙って打ち込まれ、大口を開けたラースが喰らい付いて振り回すなり、上空へ放り上げた。
(う・・?)
思いの外、大量の熱が体に流れ込んだと感じた直後、上空で崩れ去った魔人の残滓から、五つの血魂石が降ってきた。
(初めてだな・・)
一体が5個の血魂石を落としたのは初めてだった。
(これなら、もしかして・・)
期待を込めて全てを細剣で貫き砕くと、光る玉が無数に浮かび上がって、主に銀龍の少女達へと飛び込んで行った。そして、ラースにも3個・・。
(俺・・1個だけ?・・だったよな?)
ラースが3個で、俺が1個・・?
たぶん、地上に居るバルハルにも何個か飛んだ気がする。
「まあ・・な」
嘆息しつつ、神眼で自分を鑑定してみた。
(ぇ・・ぅわっ!?)
思わず声をあげそうになった。
(神眼が・・・)
凄い事になっていた。
****
固有名:シン
性 別:男性
種 族:花妖精種
生命量:9(999,999,999/999,999,999)
魔力量:7(99,274,994/99,999,999)
生命力:9
魔法力:8
筋 力:9
持久力:9
回復力:9
加 護:耐久防壁
:不撓不屈
:基礎強化
習得技能:飢餓耐性8
:打撃耐性9
:蹴撃耐性9
:拳撃耐性9
:刺突耐性9
:斬撃耐性9
:投石耐性9
:冷熱耐性9
:爆音耐性9
:汚辱耐性9
:威圧耐性9
:疫病耐性9
:感冒耐性9
:寄生耐性9
:不眠耐性9
:睡眠耐性9
:恐怖耐性9
:吸血耐性9
:魅了耐性9
:支配耐性9
:心傷耐性9
:幻覚耐性9
:呪怨耐性9
:死霊耐性9
:屍鬼耐性9
:悪臭耐性9
:窒息耐性9
:毒霧耐性9
:毒食耐性9
:腐蝕耐性9
:渡界耐性9
習得魔法:風刃Ⅹ
:閃光Ⅹ
:探知Ⅹ
:付与・聖Ⅹ
:付与・光Ⅹ
:付与・蝕Ⅹ
:付与・毒Ⅹ
:付与・速Ⅹ
:付与・魔Ⅹ
:付与・闇Ⅹ
:付与・重Ⅹ
:付与・双Ⅹ
:付与・震Ⅹ
:付与・貫Ⅹ
:付与・吸Ⅹ
:消臭Ⅹ
:消音Ⅹ
:洗浄Ⅹ
:排泄Ⅹ
固有武技:細剣技:9*19mm(15/15 *90/h)
:細剣技:5.56*45mm(20/20 *90/h
:細剣技:7.62*51mm(960/960 *50/h)
:細剣技:12.7*99mm(1,100/1,100 *40/h)
:細剣技:Rheinmetall 120 mm L/44:M830HEAT-MP-T(999/h)
:細剣技:Rheinmetall 120 mm L/44:M829A3(500/h)
固有魔技:反撃*Ⅹ
:神眼・千
:無限収納
:吸命・爪
:操辱・指
:海兎*Ⅹ
:天狼*Ⅹ
:神雷*Ⅹ
:火炎噴射
:魔法吸収
:粘体触手
:麻痺放電
固有特性:自己修復Ⅹ
:物防特性Ⅹ
:物攻特性Ⅹ
:再生阻害Ⅹ
:物防阻害Ⅹ
:魔防阻害Ⅹ
:補助命力
:望遠阻害Ⅹ
:完全隠密Ⅹ
:肉体強化Ⅹ
:弱点痛撃Ⅹ
:絶対感覚Ⅹ
:鏡破応報
:血河征旗
:剣聖
:魔族鏖殺
:天族鏖殺
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