第61話 龍の遺産

(少し増えたか・・)


 石壁を背に座ったまま、神眼・双で自分を鑑定していた。

 少女達もそれぞれ自分を鑑定しながら確認をしている。


 上の階をリコが炎魔法で殲滅した際、魔人も一緒に斃したらしく、血魂石が遺されていた。それを破壊した際に、武技や魔技などが光となって各人それぞれに与えられたのだった。相手から能力を奪う力をもった者を斃すと起こる現象だ。


(ここへ来た奴から奪ってたんだろうな・・)


 元の持ち主を失った武技や魔技は、無秩序に与えられるものでは無く素養がある者を優先して宿っていく。少女達の方が多く受け取ったようだった。


(・・耐性は増えてない・・付与と阻害が増えた)


 これらは大きな武器になるだろう。

 ひたすら基礎体力をつけ、鍛錬で細剣の技を身につけることを目指している。

 武技として顕れていないが、細剣技では何人にも負けないという自負があった。




****



 固有名:シン


 性 別:男性

 種 族:花妖精種


 生命量:8(99,874,631/99,874,631)

 魔力量:5(3,749,294/3,749,294)



 生命力:9

 魔法力:6

 筋 力:9

 持久力:9

 回復力:9


 加 護:耐久防壁

    :不撓不屈


 習得技能:飢餓耐性8

     :打撃耐性9

     :蹴撃耐性9

     :拳撃耐性9

     :刺突耐性9

     :斬撃耐性9

     :投石耐性9

     :冷熱耐性9

     :爆音耐性9

     :汚辱耐性9

     :威圧耐性9

     :疫病耐性8

     :感冒耐性8

     :寄生耐性9

     :不眠耐性8

     :睡眠耐性8

     :恐怖耐性9

     :吸血耐性6

     :魅了耐性9

     :支配耐性9

     :心傷耐性9

     :幻覚耐性9

     :呪怨耐性9

     :死霊耐性9

     :屍鬼耐性9

     :悪臭耐性9

     :窒息耐性9

     :毒霧耐性9

     :毒食耐性9

     :腐蝕耐性9


 習得魔法:風刃Ⅹ

     :閃光Ⅹ

     :探知Ⅹ

     :付与・聖Ⅹ

     :付与・光Ⅹ

     :付与・蝕Ⅹ

     :付与・毒Ⅹ

     :付与・速Ⅹ

     :付与・邪Ⅰ(001/999)

     :付与・闇Ⅰ(001/999)

     :消臭Ⅹ

     :消音Ⅹ

     :清浄Ⅹ

     :洗浄Ⅹ

     :排泄Ⅹ


 固有武技:細剣技:9*19mm(15/15 *6/h)

     :細剣技:5.56*45mm(20/20 *6/h

     :細剣技:7.62*51mm(960/960 *4/h)

     :細剣技:12.7*99mm(1,100/1,100 *3/h)


 固有魔技:反撃*Ⅹ

     :神眼・双

     :無限収納

     :吸命・爪

     :操辱・指

     :海兎*Ⅷ(78,531/99,999)

     :天狼*Ⅳ(8,862/9,999)

     :火炎噴射


 固有特性:自己修復Ⅹ

     :物防特性Ⅹ

     :物攻特性Ⅹ

     :再生阻害Ⅹ

     :物防阻害Ⅰ(001/999)

     :魔防阻害Ⅰ(001/999)

     :補助命力

     :望遠阻害Ⅷ(99,001/99,999)

     :完全隠密Ⅶ(9,067/9,999)

     :肉体強化Ⅳ(103,001/999,999)

     :血河征旗


****



(火炎・・噴射? なんだこれ?)


 見落としかけて、ふと気付いて眉をしかめた。

 こんなもの、いつの間に覚えたのだろう?


 それらしいことをした魔物など・・。


(ぁ・・ああ・・あれか)


 例の黒龍の内臓を食べて、全員で悶絶した時のやつだ。


「もしかして・・」


 俺は自身の確認に忙しそうな少女達を見た。


「先生ぇ?」


 気付いたサナエが顔をあげた。


「火を噴ける?」


「え・・ああ、いえ、私はこれですぅ」


 サナエが手を上げて見せた。その手が一瞬にして龍の爪を生やした龍の手に変じていた。大きさこそ、サナエの手に合わせて変じているようだが、見るからに物騒な雰囲気だ。


「リッちゃん」


 サナエに声を掛けられて、リコがにっ・・と笑みを浮かべた、その顔がいきなり黒龍のものに変じた。


「私はこれです」


 そう言ったエリカの背に龍翼が生えていた。


「で、私がこれ」


 ヨーコの皮膚が漆黒の龍鱗に覆われた。


「驚いたな・・」


 自在に変化できるらしく、サナエが両手を握ったり開いたりしながら、パッ・・パッ・・と人の手から龍の手へ、また元に戻したりしてみせる。


「これ、見た目だけじゃなくて、あの黒い龍みたいに毒とか出せますよぉ」


 サナエが危険なことを言っている。


「羽ばたかなくても飛べるんです」


「もう・・なんでも噛み砕いちゃいます。ていうか・・食べられます」


「正直、今着ている鎧より硬いです」


 みんな良い笑顔で笑っていた。


「先生・・火を噴くって・・あの黒龍の炎です?」


「らしいな・・」


 そう呟いて、俺はそっと吐息を漏らすように加減して魔技を意識してみた。


 それだけで、細く絞られた火炎が真っ直ぐに噴射されて通路の向こう側の石壁を灼いた。真っ赤に溶けて石壁が抉れて液だれしたような痕をつくった。

 サナエの言っていたとおりなら、この炎も熱だけでなく、黒龍の炎と同じく死の呪いがかかるのかもしれない。


「先生、そろそろ自重してください」


 ヨーコが両手を腰に当てて言った。


「ん?」


「そうですよぉ、もう魔王一直線ですよぉ」


 サナエが両手を龍手に変えて、にぎにぎと握って見せる。


「魔王・・って、別に俺は・・」


「加減しないと世界が滅んじゃいますよ?」


 龍翼を拡げたまま、ふわふわと頭を下にして浮かびながらエリカが笑った。


「まあ、私達もたいがいよね」


 手鏡を取り出して、龍頭になった自分を写し見ながらリコが呟いた。

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