27話 ハルマント遺跡 《前編》
「じゃあ、そろそろ入るか」
リンたちは一通り確認したところで遺跡に入った。
ハルマント遺跡:一層
中に入ると遺跡の奧までライトアップされた。
どうやら誰か通ると察知して光る仕組みらしい。
わざわざ灯りを照らしながら歩かないだけましだが、これでは侵入したことが分かってしまう。恐らくそれが目的で付けたのだろう。少なくともこれは冒険者がつけたとは思えない。だとしたら、やったのはゴブリンかもしれない。
空想上でのゴブリンは一体一体は弱くても、やられた相手から情報を得て、それを対策し、次はやられないように立ち回ることがある。これはその一つかもしれない。だが、あくまでも空想上の話だ。現実がどうかは奧に進まないとわからない。
(さて、どうしたものか……)
リンがそう考えていると、目の前にはゴブリンとスライムの集団が出てきた。ただ、出てきたわけではない。前衛と後衛といった隊列を組ながら、だ。
そして前衛は盾と剣を持ったゴブリン、後ろにはスライムを挟んで弓を持ったゴブリンがいた。なぜ、スライムが真ん中に居るのかは謎だが。
隊列を完成させると、前衛のゴブリンたちは勢いよくリンたちに突撃してきた。さらに後ろからは弓が放たれた。
ロドニは異空間から二本の刀を取りだし、“
ロドニはゴブリンたちが怯んでるうちに接近し、次々と斬り裂いて行った。辺り一面は血祭りとなり、完全な地獄絵図と化した。そのままロドニはゴブリンたちを殲滅した。
残りはスライムだけだったが、ゴブリンが全滅すると、後方に逃げていった。
(一体何がしたかったんだ……? なんのためにいたんだろうか……うーむ、わからん……)
リンが難しい顔をして考えていると、
「リン、知らないのか? スライムは攻撃は出来ないが、魔法を吸収する力があるんだ。ゴブリンはそれを利用して後方を守るためにあそこにスライムがいたんだ。まあ、殿下がほとんどの魔法を使わずにバッサバッサ斬っていくもんだから、ただ居ただけになっちまったというわけだ」
ハルターは簡単に説明した。
「なるほど、そこそこ考えられた行動だな」
リンはハルターの話を聞いて納得した。
それと同時に思った。
もしこれがロドニではなく、並大抵の冒険者だったら苦戦するだろう。それどころか、魔法使い単体はかなり致命的かもしれない。しかもロドニが吹き飛ばした瞬間に出てきたファイヤーフラワー、あれは完全に踏み込んだ瞬間に出てきた。
つまり向こうは、剣士が踏み込むとき、溜めで一瞬動きが止まることを知ってて攻撃してきたということになる。恐らく、長年にわたる経験によるものかもしれない。そうなるとこの先一番厄介な存在なるだろう、と。
「ねぇ、早くいこうよー! 早くしないと置いてくよ?」
リンが後々のことについて考えていると、ロドニが痺れを切らして、先に進もうとしていた。
「わかったわかった、今いくよ!」
リンは急いでロドニのあとを追った。
そして四人は、時々ファイヤーフラワーの奇襲があったものの、順調に一層を突破した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハルマント遺跡:二層
「――これは……」
入って早々、目に入ったのは石で出来た物体の数々。
しかしこれらはただの石ではない。全て墓標だった。
本に書かれていた魔物がアンデッドやスケルトンの理由がこれのせいだろう。恐らくここは大昔の王族や貴族が眠っている場所かもしれない。そうなるとここは前世でいう、古墳やピラミッドのような場所と同じな可能性が高い。
「リン、来たよ」
グアアアアアアアッッッ!!!
カツッ! カツッ! カツッ!カツッ!
頭の中で情報整理をしていると、墓標の下からアンデッドとスケルトンが出てきた。
(考えはあとだ、今は
リンたちは戦闘体勢に入った。
「ロドニと父さんはスケルトンを! 俺とレイダさんでアンデッドをやる!」
リンが三人に指示をすると、コクりと頷いて、ロドニとハルターは勢いよくスケルトンの方へ突進して行き、叩き斬り始めた。その間、リンとレイダは『火魔法』でアンデッドの水分を蒸発させて塵にしていった。
「ふぅ、これで最後か」
「そうじゃな」
リンとレイダは疲れることもなく近くのアンデッドを全て浄化させた。
「さて、向こうは終わったかな……って、うわぁ……」
リンはロドニとハルターの様子を見ると、山積みのスケルトンの残骸のすぐ横で、墓標に寄っ掛かりながら暇そうにしていた。
どうやら今回も物足りなかったらしい。
すると、ロドニはリンとレイダを見つけると、アイコンタクトで「先に行くわよ」と言って、先に進み始めた。
リンたちは墓標のエリアを抜けると、遺跡の広間に出た。しかし、ただの広間ではない。大量の〝穴〟の空いた広間だ。
「ここを抜ければ次の階層なんだけど……この穴ってまさか……」
リンの予想は的中した。
キイイイィィィッッッ!!!
所々の穴から鎧のように頑丈そうで一メートルくらいの蟻が出てきた。
(やっぱりか! これがメタルアント――)
メタルアントはリンたちを補足すると、物凄い勢いで突っ込んできた。
キイイイイィィィィッッッ!!!
ロドニはメタルアントの群れに突っ込んだ。
「今度こそ、楽しませてくれ……ッ!?」
カキンッ!
(弾かれた!?)
ロドニは急いで体勢を立て直して、メタルアントを踏み台にして、後方へ下がった。
「ねぇ、リン? あれどうなってるわけ?」
ロドニは、まさか自分の刀が弾かれるとは思っていなかったらしく、少々ご立腹だった。
「さあ? 俺は魔物に関しては専門外だよ」
リンは天井を仰ぎながら答えた。
「頑丈なのは表だけだ! 突き上げて下を狙えばメタルアントは簡単に殺れる」
横からハルターが言った。少なくともリンとロドニよりはメタルアントの事を知っているらしい。前に戦ったのか事前に出ると知って調べたかは分からないが。
「なるほど、なら俺とレイダで水魔法で噴水を起こして、メタルアントを飛ばす。その隙に下からやってくれ!」
「おう」
「わかったわ」
ロドニとハルターはいつでも突撃できる体勢を取った。そして、
「行くよ、レイダさん!」
「わかってるのじゃ」
リンとレイダはメタルアントの下に噴水を作り噴き上げた。
キイイイイィィィィッッッ!?
「今だ!」
「言われなくたってわかってるわよ!」
ロドニとハルターはそれぞれメタルアントの下に回って、関節のところを狙って、斬り裂いた。
リンは驚いた。ハルターが戦っているところを見て、だ。
ハルターが剣神として呼ばれてることは知っていた。だが、それはリンが予想していたよりも遥かに上だった。速さも剣筋もロドニに負けてないのだ。魔道具を使っているわけでもないのに追い付けることに驚きを隠せない。
そしてリンは思った。剣神は伊達じゃない、と。
「おい、リン! ぼさっとするな! 次だ!」
リンがハルターの動きを見て感心していると、ハルター怒鳴り声が聞こえた。
「あ、ごめん」
リンは慌てて、また噴水を噴き上げた。
「はあああああ!!!」
そしてまたハルターとロドニがメタルアントを斬り裂いた。それを何回も繰り返して、十分かけて全てのメタルアントを殲滅した。
「流石にちょっと疲れたわね」
「そうだな、少し休むか」
いくら相手が弱かったとはいえ、体力は少なからず消耗していた。
もし、また大量発生のときに体力が無かったら不味いと思い、リンたちは休んでから三層に向かうことにした。
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