第17話 出来事
導きの神との戦闘のあとリン達は王宮に戻った。
すると、入って早々、兵士達が慌てて近寄って来た。
行きなりのことで驚きはしたが、無理もない。
何せ、服はボロボロ、血の痕跡が至るところに残っていれば当然の反応である。寧ろ驚かない方がおかしい。
大事な陛下の娘に被害が及んでいたのだから。
そして兵士達は二人の後ろにいるレイダに視線を変えて警戒の意思を見せたが、ロドニが命の恩人であることを話したら、あっさり引いて謝罪をした。
そのあと二人は外傷がないか医務室へ運ばれた。
少し時間が経つと、陛下とウォルコット一家、ルクス、レーナが医務室の扉を派手に開けて入ってきた。
恐らく二人の現状を聞いて慌てて会場から出てきたのだろう。
服がボロボロで血の痕跡を見てあたふたしていたが、治癒で回復して今は目立った外傷がないことを確認すると陛下達は落ち着いた。
そのあと、何故こうなったかの説明を求められたが、ここでは流石にと思い場所を変えた。
リン達は会議室にやって来た。
「それで、リン? 何があったか説明をお願いしてもいいかしら?」
いつもとは珍しく真面目な声でアルシャは聞いてきた。
リンは一部を除いて話した。導きの神が行きなり現れて襲われたこと、その神に全く歯が立たなくて死にかけたこと、諦めかけていたところをレイダに助けてもらったこと、他の神に狙われる可能性があること、助けてもらった代わりにレイダに協力すること。
リンはレイダの補足を貰いながら一通り話した。自分達が転生者であることを除いて。
もし自分達が転生であることを知ってしまったらきっと悲しむかも知れないと思ったからだ。
陛下達はリン達の話を聞いて愕然としていた。無理もない。何せ、相手は神様なのだから。こっちからしたらスケールが違いすぎるのだ。
しばらくの沈黙ののち、アルシャが口を開いた。
「それでリンはどうするつもりなのかしら?」
アルシャは珍しくとても心配そうに言った。それはそうだろう、あれだけあの子なら何があっても大丈夫と思っていたのにも関わらず、死にかけたのだから。しかも相手が人智超えた存在なら尚更だ。
リンは一拍開けて答えた。
「少ししたら他の境遇の仲間を集めつつ自分を鍛えようと思います」
「つまり旅に出るということね」
「はい、母さん」
「もしまた襲われたらどうするつもり?」
「その時は自分達が対等に戦えるまではレイダさんにお願いすると思います」
「でも、聞いた話じゃこの人? も神様なんでしょ?」
「そうです」
「ならどうしてそこまで信用できるのかしら?」
「
リンは、はっきりとアルシャに伝えた。
するとアルシャは頭を抱えつつ、ため息をついて、
「リンがそこまで言うなら私は止めないわよ。でももしリンが悪用されると知ったら命を懸けて取り戻すわよ?」
「はい、母さん」
アルシャはリンからレイダに視線を変えた。
「うちの息子をどうかよろしくお願いします」
そう言いながら深々と頭を下げた。
「もとよりそのつもりじゃ。ワシとしてもこやつらは必要な存在じゃ。ワシの命に変えても守りきると誓うのじゃ」
アルシャはリンのところに近寄ってそっと抱き締めた。
「どうか死なないで、生きてかえって帰ってきて」
そう言いながら瞳には涙が溜まっていた。
「待っていてください。すぐとは行きませんが、必ず終わらして生きて帰って来ます」
すると今度は陛下がこっちに寄ってきた。
「その旅はうちの娘も行かなくてはならないのか?」
陛下は心配しながら言った。
「恐らく王国にはロドニを守れる兵はいないでしょう。神はそれほどの強敵です。王国にいるより近くにいた方が守りやすいと思いますから」
陛下は少し考え込んで、
「わかった、お前たちに娘を託そう。ロドニはそれでよいか?」
「私は最初からそのつもりでしたから」
すると陛下は微笑した。
「どうやら余の心配は杞憂だったようだ。リンよ、娘を頼んだぞ」
そう言いながら陛下はリンに頼んだ。
「はい、任されました」
一拍置いてハルターが聞いてきた。
「それで出発はいつ頃にするんだ?」
「余り出るのが遅すぎて他の仲間が手遅れになることは避けたいので遅くて3日後に出ようと思ってます」
そういうとハルターは少し悲しげに
「……ずいぶんと早いな、今日くらい家に泊まってけ」
「そうします」
リンはハルターの言葉の意図を察して了承した。
今日はもう遅いので、このまま解散となった。
そしてリンは久々の実家で夜を過ごした。
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