第8話 騎士学校との交流会

「やったわ! ついに上級魔法をマスターしたわ!」


 と、くるくる周りながらレーナは喜んでいた。


「流石だよ、レーナ。まさかこの短時間で上級魔法を習得してしまうなんて思わなかったよ」


 正直、驚いていた。

 いくら俺が独学で魔法を覚えたとはいえ、上級魔法が使えるまでに至るのに一年近くは費やした。

 それにも関わらず、レーナは僅か六日で上級魔法を習得してしまったのだ。


(これが本当の天才って奴か。なんか悔しいなぁ……)


 そんなことを考えていると、


「どうしたの? そんな変な顔して?」


「いや、何でもないよ。それよりほら、もうこんな時間だし、そろそろ帰らないと不味いんじゃないか? それと明日は騎士との交流会もあるし、早く帰って早めに休んだ方がいいと思うから」


 そう言ってリンは誤魔化した。


「あーそういえばそうだった。嫌すぎて記憶から消去してたわ……」


 レーナは遠くを見るかのように言った。


(そんなに嫌なのか……まぁ、あの空気見ればわからなくもないが)


「どうする? どうせなら送っていこうか?」

「大丈夫よ、今の私ならそこら辺の奴等なんかに負けないもの」

「確かに」


因みに今のレーナがどれくらいかと、王宮の宮廷魔導師に引き劣らないくらいまで強くなっている。

子供の学習力は常識を上回るというが、これは流石に異常だ。

レーナは出来たが、他の同い年の子にやらせて、ここまで上達するとは思えない。


「じゃあ帰るわ、今日もありがとうね? 今度来るときは高等魔法も教えてね?」

「おう、またな」


 レーナはリンに別れを言うと、スタスタっと自分の家に帰っていった。


「うーん……『高等魔法を教えて』と言われてもなぁ、これ教えたらレーナと実力はほぼ同じになっちゃうなぁ……せめてもの救いがレーナが火と土、光の魔法しか使えないことくらいだけど」

 

 リンはレーナに抜かされることに焦りを感じていた。

 レーナは天才だがリンはただ、前世の知識で補ってるだけでずるみたいなものであって本当の力ではないのだ。

 そんなことを考えていると、焦らずにはいられなかった。


「どうしたものか」


 リンはベッドに転がり、暫くして眠りに落ちた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 交流会当日


「では、皆さん、そろそろ騎士学校の生徒と交流ですが、くれぐれも仲良く、そして問題だけは起こさないでくださいね? お願いですよ? お願いですからね!?」


(キリカ先生めっちゃ一生懸命だなぁ……)


 そして、交流会の時間になった。


「おい、見ろよ! あんにもたくさんのもやしっ子がいるぜ? 見る限りに軟弱者ばっかだぜ! まあ、後で攻撃することしか出来ない臆病者の連中だから仕方ないか、ギャハハハハ!」


 (おいおい、初っぱなから喧嘩売ってきたぞ!? それに、確かにこれは苛つくな、やりたくないって気持ちがよくわかったよ)


「リン、これでわかったでしょ? アイツらは昔からこうなのよ、同じ国民じゃなかったら今すぐにでも消し炭にしてやるのに……」


 (レーナさん激怒プンプン丸ですね、はい)


「あ? ただ突っ張ることしか脳がない脳筋共が何いってるんだ?まだ、猿の方が賢いぜ」


 と、クラスの一部の生徒が言った。


「あ? んだと? やんのか?」

「やれるもんならやってみろや!」


(始まって直ぐに乱闘が始まりそうですよ、キシリカ先生……って、あれ? いない……? いつの間に消えたんだあの人? まぁ、恐らく向こうの教師に挨拶してるんだろうなぁ……ってか本当に影薄いな、あの人)


 そんなこと思ってると、両者が胸ぐらを掴み合って今にも乱闘しそうになっていた。


(はぁ、もうどうにでもなれ!)


「お前達、そろそろやめたらどうだ? なぜ私達がここに集まっていると思っている? まさかお互いを罵倒することだと思っているわけではあるまいな? これは他国が攻めてきた時のために今のうちに連携を覚えておくための交流会のはずだぞ? それなのにさっきから聞いていればもやしやら脳筋やら言いよって、今の言葉が理解できないのならここから出ていくといい」


 と、痺れを切らしたロドニ殿下は低いトーンで言った。


(おお、おっかねぇな)


「「すいませんロドニ殿下」」


「わかればよい」


(うん、流石王家)


 暫くして教師達が帰って来た。


「よし、お前ら! 先ずは四人と四人同士でコンビを組め! 組んだら動きを説明する!」


 (そう言われてもなぁ……あ、四人。ロドニ殿下、レーナ、ルクス、俺……そろってましたね、はい)


 あっさり決まってしまった。



 それで騎士の連中はというと……


「俺はグリシャ・クラネル」

「私はカンナ・ニコベル」

「俺はグラン・べリアル」

「僕はマルコ・コール」


 馴れ馴れしくするつもりはないという雰囲気をもろに出していた。


 (あー……こりゃ完全に上手く行く気がしないパターンだ……それよりも最後のやつ、マルコ・ポーロって聞こえるんだけど? 気のせい? てか、何でコイツらみんな最後"ル"なんだよ!?)


 リンは内心、呆れていたが途中で突っ込みを入れてしまった。


「私はロドニ・レオンハートだ」

「私はレーナ・ヒストリアよ」

「俺はルクス・ヘカトールだ」

「俺はリン・ウォルコットだ」


 リンが自己紹介した瞬間に、


「え? あれが英雄の息子?」

「マジか? てか、魔法学校って普通十歳からだよな?」

「どっからどうみても」

「十歳には見えないですね」


(おい! おまえら聞こえてんぞ!? 悪かったなこんちくしょう!)


「俺は七歳ですよ?」


 と、リンは営業スマイルをしながら内緒話を返す。威圧を込めて。


「あ、それは失礼しました」


 すると、さっきまでの敵対のような姿勢はなく、しつこいくらいに頭をペコペコしてきた。


(なんかさっきと態度が違う気がするんですけど? 英雄の息子だとわかった瞬間にこの態度の変容は一体……)


 そんなことを考えていると、

 ドカァン!!

 近くの方から爆発音が聞こえた。


「な、なに!?」

「何事だ!?」


 生徒達は急な出来事に混乱し、教師は周りを警戒していた。


「ケケッ、こんなにも簡単に侵入できるなんてな、大国とはいえ、堕ちたものだなぁ?」


 気づけば、狐のようなお面を被った輩がこの場を包囲していた。

 見た感じざっと二十人といったところだ。


「貴様ら、何者だ!」


 一人の教師が剣幕な表情で言った。


「あ? 俺等は雇われたただの“暗殺者”っていえばわかるかな?」


 と、へらへらしながら言った。


「この場を襲うとはいい度胸だ! 一瞬で返り討ちにしてやる! ただで帰れると思うなよ?」


 教師陣営は強気な行動を示してはいるものの、正直、相手の実力次第ではかなり危険な状態とも言える。

 何せ教師陣営は僅かたったの六人、それに対して相手は二十人だ。

 数で押しきられたら不味い。しかも生徒たちを庇いながら戦うのなら、尚更だ。

 一瞬でも人質に捕られたら完全に詰みだ。

 しかも逃げようにも囲まれている。

 初級が精々な生徒達の集まりで突破出来るとは到底思えない。


 (くぅ、余り力は使いたくないのだが……でも、出し惜しみして後悔するなら……くそ! どうしたら……)


 リンが迷っていると、


「誰に雇われたかは知らないけど、出ていきなさい! ここはあなた達がいるべき場所ではないわ! もし、出ていかないのなら、この私が相手よ!」


 と、レーナは狐のお面被った暗殺者達を睨みながら言った。


 (ちょ、レーナさん!? なに啖呵切っちゃってるのかぁ!? いくら上級魔法まで使えるからって初っぱなから実戦なんて無茶だろ!?)


リンはレーナの思いきった行動に驚きを露にした。

そして少し考えて、


(仕方ない、もし危うくなったら俺もやるか……ここで死なれたら目覚めが悪いし。といっても、俺も戦闘に関しては未経験なんですけどね)


 リンは無理だと思ったら加勢する形を取った。





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