第7話 フラグと魔法使い
そして二人は異空間で魔法を練習した。
「ふあぁ……ねみぃ……」
昨日クラスの三人と実家へ行ったときの疲れがまだ残っていたリンは眠そうだった。
「あー今日からまた学校か、俺からしたら今更感ある内容なんだよなぁ……正直寝てたい」
リンは不満を垂れ流しながら学校へ行く支度をしていた。
「さて、行きますかね」
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「今日も何事もありませんように」
そう呟きながらリンは教室に入っていった。その言葉がフラグに繋がるとも知らずに。
「みんなおはよ―――って、あれ……? どうした?」
リンはいつも通りに挨拶しようとしたが、教室に入るとみんな暗い顔をしていた。
(え? 何これ?)
リンがクラスの雰囲気を気にしてると、レーナと目があって、なぜかこっちに向かってきた。
「リン聞いてよ! 今度、騎士学校の生徒との交流会があるんですって! 本当に最悪だよね!」
(へぇーそんな行事あるんだ。それでこの雰囲気か。でも、そこまでか?)
「別に大したことじゃないだろう? ただの交流会なら尚更……」
「――甘いわ、リン! これは私達の魔法使いに取って嫌な行事の一つなの! アイツら私達が後方支援しか出来ない軟弱者とか行ってくるのよ! 目が合う度に煽られて、あー思い出すだけで腹が立ってきたわ!」
「まあ、落ち着けって……」
リンがレーナを宥めていると、
「まあ、私達は私達で、アイツらは突っ込むことにしか脳がない脳筋って言ってるがな」
と、後ろからロドニ殿下が付け足すように言った。
「結局は五十歩百歩ってことか……はぁ」
犬猿の仲相手にうまく接する事が出来るのか怪しくなってきた。
リンは今後の事を考えると頭を抱えてしまった。
そして、めんどくさいから休みたいと、心からそう思った。
「それで、いつやるの?」
「一週間後よ!」
「それは急だな」
「昨日急遽決まったらしいの、最近は他国同士の争いが絶えないから自分の身を守れるように、ですって、余計なお世話って感じだよね!」
(まあ、他国が戦争しててこっちに被害が及ばないとは限らないし、わからなくもないけど……、この状態で交流会かぁ……)
「はあ」
リンはやるせない気持ちで一杯になった。
(出だしの発言が裏目に出たな。フラグって怖いなぁ……)
これから起こることに肩を落としていると、チャイムが鳴って授業が始まった。
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放課後
授業を一通り終えたリンはさっさと家に帰ろうとしたが、レーナに話があると言われ、教室に残っていた。
「それで話って?」
「私に魔法を教えて!」
「えぇ……なんで?」
「あの脳筋共に舐められないためよ!」
「プライドの問題でしたか。でもまぁ、構わないですよっと」
「ホント!? やったあー!」
レーナは嬉しそうに跳ねていた。
「じゃあ、好きなときに俺のアパートに来なよ」
「そのまま行くわ!」
「え? 親御さん心配しない?」
「予めリンのところで魔法教えてもらうって言っておいたから平気よ!」
(初めから了承前提の行動かよ。断ってたらどうしてたんだか……まぁ、そんなことはどうでもいいか)
「じゃあ、帰るか」
「うん!」
そのままリンは、レーナを連れてアパートに向かった。
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アパートに帰ると直ぐに準備に取りかかった。
「さて、レーナ。魔法使いにとって一番重要なことは何だと思う?」
「魔力制御じゃないの?」
とレーナは当たり前じゃないという顔で答えた
「そうだね、魔力制御は魔法使いにとって基礎中の基礎に当たるものだ。だが、殆どの者は基礎がちょっとができたらって出来たと勘違いして直ぐに上の技を目指そうとする。そうすると初歩の完璧ではないところが綻びとなって、それ以上の高度な魔法使いには慣れないんだ。つまり何が言いたいかだけど、強くなりたければ、小さいことの積み重ねが大事ってことを言いたいんだ」
「へぇ、そうなんだ。私もそうしたら強くなれる?」
「最低でも高等魔法使いにはなれるな、実際に俺がこうしてなっているわけだし」
「よし! 私頑張る! それで何から始めるの? 初級魔法から?」
嬉しそうな眼差しで此方を見てきた。
「じゃあ、初歩の魔力制御をしてみようか」
そう言うと、レーナはジト目で睨みながらこっちを見てきた。
「馬鹿にしてるの? いくら私がリンよりレベルが低いからってこれくらい出来るわよ! ほらっ!」
そう言いながら掌に魔力の塊を作り出した。
「じゃあ、その魔力の塊を星形とか円錐形に出来る?」
「そんなの出来るにきま……あれ?」
「やっぱり出来てないな、それくらい出来ないと高等魔法使いどころか上級も怪しいぞ」
リンの言葉に気に触ったのか気が付いたら頬を膨らませていた。
「こんなの直ぐに出来るようにしてやるわよ!」
暫くして――、
「で、出来た!」
少し不格好ではあるが星形が出来ていた。
「早いな、取り敢えず自分の思った形が一通り出来たら次の段階に行こう」
「わかったわ!」
そう言って黙々と練習していた。
また少し時間が経つと、
「見なさい、リン!」
言われて見てみると、三角形になったり星になったり四角になったりしていた。
どうやら感覚がわかってきたらしい。
「上出来だ、よし次の段階に進むか。――あ、いい忘れてたけど魔力制御は毎日やれよ? 少しサボれば感覚が薄れていくからな」
「わかったわ! それで次に何を教えてくれるの?」
今なら何でも出来るぞと、言わんばかりの勢いで聞いてきた。
「まあ、安定の初級魔法やるか」
「うん! でも、どこでやるの?」
「え? ここでやるけど? あー、そういえばまだ教えてなかったか」
そう言いながらリンは異空間を展開した。
幼い頃から魔法を練習していた馴染みのある空間である。
「じゃあ、行こっか?」
誘うように言いいながら、後ろを向くと、レーナがポカーンとしていた。
「リンって無詠唱なの?」
「そうだよ、てか詠唱とか恥ずかしすぎて言えないわ」
「どうしたら出来るの?」
「簡単に言うと物事の理屈を頭で順を追って発動させるって感じかな? ようは、そこまでの過程を想像するって感じだよ」
そんなことを言うと、レーナな首をかしげていた。
「難しくてよくわからないわよ……」
「まあ、焦ることはないよ、そのうちわかるから」
「えぇー」
レーナは少し不満そうな顔をしていた。
そして二人は異空間で魔法を練習した。
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