第6話 シュトラール&ラグエル
さて、主よ。
未来を考えよう、この迷い子の。
はじめよう。
「久しいねレベル君。僕の名前……覚えているかい?」
「シュトラールだろ。シュトラール・ラウエ」
不躾な子だね。仮にでも先生である主に対してそのような言葉づかいは。
足をくみ、肘をついて目線も合わせない。どう引き入れたものか。
「ははっ……調子はどうだい?モンスター……なんとか、ゲーム好きだったよね」
「無理にそんな話しなくていいよ。なんの面談だよコレ」
今回の二者面談、これはレベルのスートを決めるためのものだ。この学園では生徒の適正、ソウルとの相性を考えた上でスペード、ダイヤ、ハート、クラブの4つの学部に別れる。
我が主、シュトラール・ラウエはクラブのキングに位置し、ソウル研究者兼教師として勤めている。つまり……。
「クラブに移ってこないかい?君の学力には驚かされたよ。ダイヤの芸術家路線よりクラブにてソウル学の研究、人類にその頭脳を貢献させるべきだと思うんだ」
そうだ。君は対人関係には問題がありそうだが、その知能はクラブにて輝く。
相変わらず、目線を合わせない。この態度は……恐らく不安からくるものか。我々に信頼を寄せることは難しいだろうし、まだ心は子供、将来なんて漠然としたものだろう。
返事はない。
さて、どう心を開かせたものか。
「ソウルトークというアプリは知っているかい?」
そうか、その手があったか。
少年がこちらを一瞬みる。やはりこの少年は……。
「ソウル同士のコミュニケーションツールだろ?あんたが作ったんだっけ」
ソウルトーク、半月前に我々が開発したアプリだ。内容としては、人間の「アニマ器官」という臓器からから微弱に放出する波を端末で読み取り、普段表に出ることのないソウル同士での交流を深めるものだ。会話した内容は全て主人たちには公開されている。
「実は次のアップデートで拡張しようと思う機能があってね。ソウルの「声」を聞くことができるんだ。」
「声を……?」
興味があるのだ。
「そうさ。僕のラグエルとの君のべリアル君とで話をさせたいと思ってね。ちょうど良い機会だ。四者面談といこうか」
レベル少年が黙る。ソウルと話し合っているのだろう。
「べリアルも話してみたいって言ってるぜ」
「そうかい!じゃあ早速……」
「……いや、有料だろ?カード買ってきてよ。」
……なんという子供だ。
「申し訳ありませんっ!」
開口一番、謝ったのはべリアル。
「いえ、いいのです。それがレベル君の個性でしょうから」
なるほど、予想通りの性格だ。
「どうだいレベル君、君のソウルの声は?」
「…………。」
予想外の反応だな。喜ぶと思っていたのだが。
「……はじめて話しかけたのが俺じゃなかった。」
そう来たか。
「わ、悪いレベル。それよりどうだ?クラブの話、ちょっとソウルの研究面白そうって言ってたよな」
レベル君は急に慌てだした。
「ばっ、バカ野郎!言ってねぇよそんなこと!」
「そうかいそうかいレベル君!いやぁ、先生嬉しいよ!」
「うるせぇ!俺は絶対ダイヤ通ってミュージシャンになるって決めてんだよ!」
ミュージシャンか……芸術の何が役に立つというのだ。人類の発展に貢献してこそ人間だろう。はっきり言って無駄な学部だ。
「僕のラグエルは芸術のことを馬鹿にしてるよ。ははっ、声には出してないみたいだけど」
「シュトラール!何を言い出す!?」
「このようにね、僕らのやりたいこと、僕らの研究はソウルについてまだまだ知らないことを発掘することができる未知の分野なんだ」
なるほど、そうまとめてくるか。
「ここだけの話、いずれはソウルを実体化させる算段をたててる。どうだ、面白いだろう?」
「べリアルに……会えるのか?」
これは極秘裏の話。なぜなら、ソウルをもとにした宗教の反感をかうことになるだろう。
だが、人の欲は計り知れない。
「さて、クラブへの勧誘は諦めた。やはり君にはもっと輝ける場所があったよ。」
はじめから、そういうつもりだったのか主よ。
「ジョーカーに来てみないか?」
Stand by you @gurassimiri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。Stand by youの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます