第3話 ログ&セイリュウ

 最近、サイコパスって言葉の意味を知ったが、うちの主人のことだな。

 いや、猟奇的殺人鬼ってわけじゃないぜ。

 別に悪く言うつもりはないけどよ。良い意味でもないんだなこれが。



「部活の掛け持ちは禁止と言ってるだろうログ!」

 見ろよ、先生の顔。猿みたいに真っ赤だぜ。

「ですから、僕は頼まれてやっているんです。断ることなんてとてもできません」

「そんなことして、お前のソウルは何か言ってないのか!?」

 さんざんやめるようにと、言ってるんですけどね。ログ、それでもお前は……。

「彼は日程の管理などサポートしてくれていますよ。頼りになっています」

 また嘘をつく。平然とした顔で言うからな、恐ろしいぜまったく。


「……私が本当に言いたいのはだな。1つに絞ることでお前はもっと伸びると思っているんだよ」

 先生はお前のことを親身に思ってるはずだぜ。彼女は情熱的だからな。

「ありがとうございます。でも、僕は皆のためを思ってやってるんです。そこは譲ることはできません」

 また嘘だ。自分の満足のため、そうだろログ?


 ジャネット先生の説教も終わり、したり顔のログ。いや、いつもこの顔か。

「ログ、俺のことで嘘をいうなよ。なんか地味に頭が良いみたいな設定になってたじゃねーか」

「悪いね、セイリュウ。僕は人のためならなんでもする人間なんだ」

 そうか、そうなのか?いつも側にいる俺からみたら、己のためにやってるようにしか見えないんだけどよ。

 ログは教室までたどり着く。ここからはずっとログのステージだ。


 いかにもやんちゃそうで小柄な少年がログに近づいてくる。親友のキヤルだ。

「なぁ、ログ。明後日の試合なんだけどさ。助っ人として来てくれないかなーなんて」

「あぁ、シャルール学園との試合かな?あそこだったらキヤル達なら勝てるよ。悪いね、先約があるんだ」

 ログはすべてを把握している。日程、自分のチームの実力、相手のチームの実力。そして頼まれるタイミングまで。

「そ、そうか!ログが言うなら勝てるかも、いや勝ってみせるよ!」

「その意気だよキヤル!誘ってくれてありがとな!」

 激励と感謝。はっきり言って俺もログがそう思ってるかはわからない。ソウルの俺がだぜ?悲しいったらありゃしない。

 席に着くなり、人だかりが出来る。


「ログくん、数学のこの問題でどうしてもつまずいちゃって……」

 親友その2、デーリ。

「ログ、委員会で使う資料まとめてくれたかな?」

 親友その3、スズ。

「ログ、お願いだけど……」

 その4。

「おい、ログ」

 5。


 昼休みも終わって、次の時間は確か期末テストの結果がくるはずだ。

 周りはとっくに気づいてる。今回もログが一番だってな。

 視線を感じる。彼らが気になっているのは、ログが毎度逃している五教科それぞれ百点満点の成績。1つは2つはミスするんだぜ、以外だろ。


「では、成績シートを返すぞー。先生が席をまわるから、静かに待て。受け取った後にもだ」

 ん、まさかまさか?

 教室全体が祝賀ムードに。ログはいつもの笑顔、口角がいつもより上がっているのは気のせいかな。


 順番に先生が回っていく。受け取った生徒は自分の成績より、ログの点数発表を今か今かと待ち望んでいる。


「では、ログ君。君の成績だ。」


 498。

 ん?んん?いつも通り……。


 ガタンッ!

 急に立ち上がるログ。

 ってこれは……!

「おめでとうログー!」

「見せて見せてー!」

 待て待て来るな来るな!


「……2位だ。」

 周りは状況がつかめてない。

 ログはもっとだろう。




「俺より先に五百点をとったヤツがいる。」





「くしゅん!」

「ちょっとレベルお兄ちゃん風邪引いたのー?」

「久し振り外に出たからなー。そうかもしれん」

「いきなりテストだったんでしょ?やっぱり成績よかった?」

「いーや、鼻かんでゴミ箱に捨てた。クラカ、ティッシュ箱どこにあったっけー?」

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