放課後 喫茶店にて
姫島は、居住区域と軍事区域に分かれている。居住区域に住む一般市民は、中央にある学園から反対側に出入りすることはできないが、学園の生徒たちの寮が居住区域側にある為、学生証があれば自由に移動できる。
放課後、Eクラスの生徒たちは行きつけの喫茶店に集まっていた
「なんなの?あの白井って人は!」
アリスは張り詰めた糸が切れたように声を荒げ、飲み干したコップをテーブルに叩き付ける。その勢いで、中の氷がひとつテーブルにこぼれた。
「本当だね~、私ビックリしちゃった。あ、シャルさん。そのケーキ一口ください」
「いいわよ。はい、あーん」
荒れるアリスを横目に、二人の生徒たちがケーキの食べさせあいっこを始める。
「リルスさん!シャルロットさんも、真面目に聞いてください!」
何を真面目に聞くのだと抗議する少女、リルス・フォルトは幸せそうにケーキを頬張る。
「お待ちどうっす~、カプチーノのお客様は…」
「私よ、シルヴィさん。今日もバイトお疲れ様」
シルヴィからカプチーノを受け取ったシャルロット・アンスレイは、優雅な振る舞いでカプチーノを口にする。
「ほぉ~」
「なに?そんなにじっと見られると飲みづらいわ」
「あぁ、すみません。でも、ブロンドのロングヘアーなんて、絵的には紅茶の方が似合いそうっすけどね~」
彼女の光に透けて輝く髪は、確かに淑女を思わせる気品を感じさせた。
「私は甘い方が好きなのよ。それに、紅茶が似合うのはあなたの方なんじゃない?元王女様?」
「やめてくださいよ~。それに、私は王族よりもこっちの方が性に合ってるっす」
そう言って、シルヴィ・アレイヤは中世のメイド風の制服を見やる。
「そうかな、きっと似合うと思うけどな~。あ、シルさん私ケーキセット追加で!」
先ほどの暗い空気はどこへやら。いや、そもそも暗くなっていたのは自分だけでないかとアリスはため息を吐いた。そこで、隣が低いうなり声をあげていることに気づく。
「岸部さん、どうかしましたか?」
「…ちょっと、考え事」
そう答えた岸辺由奈は、抹茶ラテをストローで吸いながらスマートフォンを睨みつけていた。
「…さっきの白井って人、どこかで見たこと、あると思って、ネット探してる」
「なになに、白井さんって有名人なの?」
「あら、あの人は軍の人なんじゃないの?」
「そうよ、それにあんな奴一度見たら忘れそうにないわ」
白井陵輔有名人説で盛り上がるなか、岸部はとある記事を見つけて声を上げた。
「…あ、これじゃ、ないですか?」
岸部は皆に画面を向ける。それは、とあるまとめサイトのページだった。アリスは、その文面を読み上げる。
「なになに…“極東の悪魔の正体は日本の青年?”…」
そこには、モザイク付きだったが、宙に浮く一人の青年が写っていた。その顔は、確かに先ほどの不機嫌な軍人によく似ていた。
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