第3話 吾輩はお腹がすいたのである。

 吾輩はにゃんこである。

 そんな吾輩はただいまおにゃかがペコペコにゃのである。

 それよりもここはどこにゃのであろうか?


 吾輩は、吾輩の身を包むふわふわの合間からひょこっと顔を出した。

 吾輩知ってる、人間はこにょ角度に弱いのである。

 にゃんで生まれたばっかりの吾輩がこんにゃことを知っているのか聞くのは野暮というものにゃのである。

 とにもかくにも、吾輩たちにゃんこは自分が一番かわいく映るポーズというものを知っているものにゃのである。


「みぃーっ、みぃーっ!」


 吾輩おにゃかすいたのである!と言っているつもりにゃのである。

 思考回路とは裏腹に吾輩の口をついて出てくる言葉は残念にゃがらただのにゃんこのにゃき声にすぎにゃい。


「あらあらもうお腹すいたのね、ちょっと待ってて。」


 吾輩の前に現れたのは、母親ではにゃかった。

 人間にゃんだろうか。

 吾輩の目にはそう見えたのにゃ。

 まぁまだ目が開かにゃい吾輩には声で判断するほかにゃいのだが。


 そのおんにゃは腹のすいている吾輩に声をかけると、どこかへ行ってしまった。

 待って、行かにゃいでくれ、と吾輩は後を追いかける。

 追いかけるとはいっても、まだ立つこともままにゃらないこの足は動いてくれにゃい。

 吾輩のかわいいお手手は虚しく宙をきっただけに終わった。


「はいはい、お待たせ。」


 ほどにゃくして、おんにゃは吾輩のもとへ戻ってきた。

 この匂いは嗅ぎ覚えがある。

 さきほど吾輩はこの匂いのするものを口にしたようにゃ気がする。

 ミルクにゃ!


「ほらそんながっつかなくても逃げないわよ。」


 吾輩は一心不乱にそのミルクを求めた。

 いまだ目が開かず、よく見えにゃいが自慢の嗅覚を頼りにそのミルクを口にする。

 甘くておいしーのにゃ!


「けぷっ」

「あらあら、大丈夫?」


 ちょっと焦りすぎたのにゃ。

 勢いあまってにゃがれこんできたミルクが吾輩の喉を圧迫しそうににゃる。

 おんにゃが吾輩の背中せにゃかをさすると間一髪、ミルクは喉に詰まらず胃へと向かった。


 その後の吾輩は慎重ににゃったのだ。

 急いては事を仕損じる。

 にゃにごとも焦らず丁寧に行にゃった方がいいと、賢い吾輩は学習したのにゃ。


「はい、おしまい。」


 ふむ、吾輩は満足したのにゃ。

 おにゃかは充分に満たされ、吾輩の瞼は(閉じているに等しいが)どんどん重たくにゃってくる。

 おんにゃは吾輩の体をふわふわで再び包み込むと、またどこかへ行ってしまった。

 吾輩はその微睡まどろみに身を任せて、眠りについた。


 眠っている間でも吾輩のキュートなお耳は仕事をしているのにゃ。

 いつ外敵に襲われるかわからぬ我が猫生にゃんせい

 外の情報をしっかりとキャッチしておくことは、吾輩が生き抜くにあたって必要不可欠にゃのである。


 ゴリ、ゴリとにゃにか柔らかいものを磨り潰すようにゃ音が聞こえる。

 そして、苦そうにゃ臭い。

 にゃにをやっているのか吾輩にはとんと見当もつかにゃいが、吾輩に関与しなければ特に気にもにゃらない。

 あのおんにゃがその気ににゃれば、眠っている吾輩にゃど一ひねりだろう。

 にゃのに、いまだにゃんの危害も加えられていにゃいということは、吾輩はあのおんにゃに保護されているのであろう。

 にゃら今は警戒する必要にゃどにゃいと言える。

 そんにゃことより吾輩は眠りについて英気を養う方が先決にゃのだ。

 まだチビにゃ吾輩の意識は泥のようにゃ眠りに誘われていった。


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