夏の箱

 カレンダーに8月32日を書き加えた日。


 9月が迷惑そうに、ひとつ右へと追いやられた。


 席を奪い合う、僕らの教室みたいだね。


 友達の輪からあぶれたあなたは、8月32日よりも気味が悪い。


 死ねばいいのに。


 あなたがいなくなった後、左端の席じゃないのに赤い子がいたから、その子を殺したよ。みんなはその子が赤くて、とっても嬉しいみたい。その子もいなくなったら今度は、青い子が殺されるのかな。それともまた、赤い子が殺されるのかな。黒い子の私は、きっと殺されることはないから、とってもどうでもいいんだけどね。


 隣のクラスでは、誰を殺すかで揉めてるみたいだったよ。でも、8月32日に追いやられて、左端の席じゃないのに赤い子が一人になっちゃったみたい。可哀想。本当は二人いたのにね。左端の席になったその子は、仲の良かったその子を一緒になって殺してる。でも本当にみんなから疎まれているのは、とっても赤くなったその子だったよ。きっと次に殺されるね。


 同じなのにね、何も。変わらないのにね。こんなことに何の意味があるのかなって、あなたを殺した時、思ってたよ。


 殺しながら思ってたよ。


 どうでもいいから、とりあえず思うだけ思ってたよ。


 死ねばいいのにって。


 あなたを殺したのは、誰なのかな。あなたを殺すと決めた、みんなかな?それとも、カレンダーを書き加えた私かな?素知らぬ顔をする8月32日を、あなたは恨むのかな。


 夏休みももうすぐ終わるね。お疲れ様。楽しかった?宿題はやったかな?やりたいことはできたかな?あなたに聞いても仕方がないね。


 だから、独り言を言うね。


 聞いてくれる?


 ねえ。


 明日はまだ、休みなのかな?

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