第7話

晴れた朝が好き。遮光カーテンの向こうから明るい光がこぼれていて爽やかな風が部屋の中に遊びに来る。キッチンからは軽快な料理をする音が聞こえる。何だかそれだけで幸せになれる。

義兄は料理も上手くて朝の家の中はいつも良い香りに包まれている…


「お兄ちゃん!お兄ちゃん!起きて、起きて!!」

日曜日の朝私は何時もより少し早めに起きてみた。

私達は部屋に鍵をかけるという習慣が無く、いつでもお互いの部屋に出入りできる。ただし基本は二人ともリビングにいるので、用もなく相手の部屋に入る事はない。


「ん~おはよう、ケイト、今日も良い日になりそうだね」

兄は目も開けずにそう言って布団を深く被り直した。

「お兄ちゃん!起きてよ!!」

私が布団をパシパシと叩いた。すると兄は唸り声をあげながら

「今日は日曜日だよ~特に用事もないしもう少し寝ようよ~」

と言った。

「そうなんだけど…」

私が口籠もるようにそう言うと兄は布団からちらりと片目だけだして私の顔を見た。そしてゆっくり手を伸ばすと私の鼻先にに触れた。

「わかった。起きるから、用意してくれる?」

兄はそう言うとゆっくり体を起こしてさっき私に触れた指をペロリと舐めた。私が慌てて触るとそこにはクリームがついてしまっていた。

それをみた兄はクスリと笑った。


私は少し口を尖らせながら兄の部屋を出た。目の前のダイニングテーブルにはホイップにチョコレートソース、さくらんぼをデコレーションしたホットケーキが小さく湯気を立ててホイップを溶かしていた。ポットの横の砂時計は砂が落ちる直前だった。

「お兄ちゃんには何でもお見通しか」

私がそう言って溜め息を吐くと後ろでドアが開いた。

「でも、ここまでとは思わなかった」

兄はそれだけ言うとまたパタンと部屋に戻った。そしてすぐに扉が空くと兄は今から不思議の国のお茶会に行くようなフリルと大きなリボンのついたタキシードで立っていた。深々と小さなシルクハットをとって「本日はお茶会にお招きありがとう。お嬢さん」と言ってお辞儀をした。

私がそれを見てクスクスと笑うとベランダからリビングを抜けて爽やかな風が家の中を吹き抜けた。するといつの間にか部屋中を甘い香りのする花びらが舞っていた。

「さあ、食べよ」

兄はそう言って笑った。

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