第8話

義兄は料理も得意だ。特にお菓子作りが得意。でも、一番最初に作ってくれた時はとても食べ物とは言えなかった。使い慣れないオーブンで火傷したり、上手く泡立てられずに腕を痛めたり、お菓子を作る度に怪我をしていた。それでもやっぱり出来上がったお菓子は炭だったり、しょっぱかったり。それでも私はそんな兄のお菓子がどんな店のお菓子よりも好きだった。


「じゃあね、キリ君。また明日~」

私は玄関の前でキリ君と別れを告げて家に入った。

キリ君は私達の家の隣に住む、私と同い年の少年。初めて出会ったのは初雪が降る頃だった。彼は本物の魔法使いで、初めて出会った場所は家の前に飛び出てる電信柱の上だった。彼はこの近くにとても凄い魔術師がいるのだと言ってその人を探しに来たそうだ。

基本的に無口で愛想がない。でも実は打たれ弱くて、とっても優しいのだ。

「お兄ちゃん、ただいま~」

私は靴を脱ぎながら家の奥にそう言った。

「おかえり」

兄の返事が聞こえた。

リビングキッチンの私の家は廊下を抜ければ直ぐにキッチンがある。

扉を開けると部屋中を微かに甘い匂いが漂っていた。兄は厨房にたって黙々と何かを作っていた。


「・・・。お兄ちゃん何やってるの?」

コートを脱ぎながら私がそう言うと兄は綺麗な白鳥の飴細工を持っていた。

「わぁ~綺麗!」

兄の持った飴細工を見て私がそう言うと、兄は嬉しそうに笑った。

「大学の友達が飴細工を作るセットをくれたんだ~」

兄はそう言うと「はい」と飴細工を私にくれた。少しだけ羽の部分を舐めて見るととても上品な甘さがした。

「材料はまだあるからケイトも作ってみる?」

兄はそう言って笑った。私が大きくうなずくと「じゃあ、着替えておいで」と言って飴細工を私の手から取り上げて立てて置いておける台に差し込んだ。そこには何だか得体の知れない生物が沢山いた…

「・・・お兄ちゃん、それは?」

私がそう聞くと兄は慌ててそれを隠した。

「何でもないよ!!ほら、気にしないで着替えて来なさい」

と言って私をキッチンから追い出した。


・・・。


「はぁ、恥ずかしいものを見られてしまった」

僕は溜め息を吐き、失敗作の一つをペロリと舐めてみた。

「あんまり美味しくない…」

舐めた舌をそのままに僕は取り敢えず妹が着替え負える前にこれらの物を抹殺しておこうと、コンロの火をつけた。

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