第8話 Blauer Himmel
不思議な夢を見た。
燃え盛る美しい銀の炎に、身が焦がれる夢。
その熱は初め、自身の身が引きちぎれる程に乱暴できつくマグマの様に熱い炎であったが、次第にその熱は自身の温度に馴染んでいった。
ぬるま湯のように温かく、そして火傷の跡を癒していくのだ。
あまりの心地よさに、このまま銀の炎に抱かれ眠ってしまいたい、そう思う程にイブキは炎に心酔した…刹那であった。
ぱちり、とイブキが目を開ければ目の前には鼻と鼻がくっつく程に接近したマシューの顔が間近にあった。
「嗚呼、漸く起きましたか」
至近距離で射抜かれる金の瞳、その低いテノールの声色にイブキは全身の鳥肌が立つのが分かった。
思わず声にならない悲鳴をあげれば、いつの間にか自分に馬乗りになっていたのか「よっこらしょ」と言って自分の上からどいたマシューに、一瞬自分の寝ている間に何をされたのかと無意識に胸元の着物をきつく合わせ握りしめた。
イブキの慌てたような動作を流し見したマシューは、特に気にすることもなく立ち上がり「さあ、行きますよ」と仰向けに寝るイブキに声を掛けた。
訳が分からないイブキだったが、マシューが歩き出したのを見計らって慌てたように立ち上がれば長い時間寝ていたのであろう畳の跡が肌にひっつき白い肌にうっすらと赤みを帯びた跡が残った。
「マシュー殿…契約は、しないのか?」
「マシューで結構。契約なら済みました」
「は?どういうことだ」
「あなたが寝ている間に、ですよ。さあ!荷物は最小限にまとめて出発しますよ」
「あ、おい」
ばたん、とイブキの部屋の扉がマシューの後ろ手によって閉ざされた。
一人きりになったイブキがぱちぱちと何度か瞬きをし、己の手を見つめグウにしたりパーにしたり。
契約したと言っていたが、イブキはまったく自分の身体の変化に気付けないでいたのだ。
小首を傾げ無意識に左隣にある全身鏡を見たイブキ。その顔は寝起きながら酷い有様で。
「…っよし」
軽く自分の頬をぱちんと叩き、気合をいれる。
長襦袢しか着ていなかったイブキは旅支度を整える為、箪笥を開け奥にしまったお気に入りの着物と帯を引っ張り出した。
美しい織部に金の雲や菊等描かれた女物の着物。
金の帯紐を口でくわえ、萌葱色の帯留めがついた黒い帯紐を自身の腹回りに巻き付けながら、イブキはマシューとの契約内容を思い出していた。
「私と契約するにあたっての条件を説明しましょう。一つ、契約後あなたがこの国に帰る事はしばらくないでしょう。帰りたいときは返してあげますが、それには私が許可せねばなりません。私が帰れと命令しない限り、しばらく故郷に戻ることはできないでしょう。
「二つ、私の意向に絶対に背いてはならない事。私の部下兼弟子となる以上、私には最大の忠誠を誓っていただきます。強制は致しませんが、裏切り等もっての外!口答えもあまりしないコト☆」
「三つ、私と契約する事によって貴方にもいずれ私と同じ魔法が使えることになるでしょう。ただし、鍛錬や窮地に際した時以外での力の解放は禁止します。闇雲に力を見せびらかし、行使することは私の道徳的美学に反する。心して守る様に」
「そして最後に…」
「…”正義の心を、忘れない事”……」
ぱんっとしっかりと美しく絞められた帯を手のひらで叩き、机の引き出しから銀の簪を出した。
銀の細い花模様が描かれたそれはシンプルかつ精巧でイブキのお気に入りである。
またそれを口にくわえ、片手で髪を結いあげながらもう片方の手で鏡を手前に引っ張り出したイブキは慣れた手つきで髪を纏め上げ、簪をさし髪紐を編み込んでいく。
縛り終え首を左右に振り身だしなみを確認し終え、イブキは黒色の見事な羽織に手をかけ羽織った。
全身鏡を前に、イブキは自身をしばらく見つめ、やがて袖から紅を出すと貝殻を開き指先で赤と掬うと唇に彩っていく。
男であるイブキは、この瞬間が好きだった。
白い肌、黒い髪、黒い瞳、濃くもなく薄くもない顔面が、唇に赤を差し入れるだけで途端に息を吹き替えすように色づく瞬間を。
気合を入れ、自身の姿に満足気に頷いたイブキは再度持ち物を確認した。
確認作業はものの数十秒のみ。
イブキはお気に入りの着物と簪、扇子と下駄と結い紐だけを持ち、イブキはふと後ろを振り返る。
其処にはいつも城下から外と空を見通していた大きな格子窓。明朝だというのに美しく最後まで変わらない金の雲景色を見つめ、イブキは長年使っていた自分の部屋に別れを告げたのだった。
***
正門から出ず裏道からイブキとマシューは城を後にし、イブキはマシューに連れられるまま道を進んでいく。
明朝だということもあり、城下はとても静かで時々飛脚の姿がちらほら見かけるだけ。
誰にも声をかけられることもなく、検問にたどり着いた二人を出迎えてくれたのは、朝番を担当する小柄な女忍の検問兵だった。
検問兵はイブキの旅立ちに心から涙を流してくれていたが、マシューは感動の別れも早々に検問兵の一人に話しかけた。
「所で、昨晩予約した馬車の手配は用意していただけましたかな?」
「ぐすっ…はい!勿論でございまする。そろそろお迎えに来る筈なんですが…あ!きましたわ!」
僅かな馬の蹄の音に聴覚の良い女忍である検問兵はそれに気付き、北側からやってきた黒く大きな馬車を指さす。
それにマシューは「確かに」と頷き、イブキは心中いつの間に馬車なんて手配したんだと息をついた。
自分たちの目の前で止まった馬車に、検問兵はすかさず手綱を引く運転手に生き先の確認をとる。
ものの数秒で話をつけた検問兵がマシューに向き直り「どうぞ、お乗りください」と笑みを向ければマシューはにっこりと紳士スマイルを披露した。
「素晴らしい働きっぷりですね!優秀で美しい検問兵にチップを」
「そんな!当然のことをしたまでですわ、仕事ですから!それでは、イブキお嬢様、お気をつけて!」
「…気になっていましたが、もうわたくしがこの国から出るという事をお分かりなのですね」
「はい、昨晩椿様が城下に御触れを…なので皆知っております。イブキ様が旅立ち、またこの国に戻ってきてくれることを」
検問兵は顔に纏う顔隠しの布をとると、その美しい口元を晒しイブキの目を真っすぐに見詰め胸の前で手を合わせた。
「これは私達との約束でございまする、生きて必ずこの国に舞い戻ってきてくださいまし!」
「ーー…えぇ、約束でございまする」
口約束をかみしめる様に決意を固くしたイブキに検問兵は満面の笑みを浮かべ、大きな門を開ける開錠レバーを思い切り引き下ろした。
「女ノ国、開門!」
ゴゴゴと厳かな音が響く中、扉が開かれる隙間から明朝の朝日が照らされていく。
眩しく広がるその光に、イブキは緊張で心臓が激しく高鳴るのを感じていた。
扉が開ききり、この門を通れば、イブキは初めて外の世界に一歩足を踏み入れるという事になる。
ガコン、と門が固定され馬車が先導するように門を通りそれに続くようにマシューも国を後にしようとする。
イブキが遅れて外に踏み出せば初めて踏む芝生の感触と外の匂いに肌が立ち、思わずにやけそうになるもマシューが馬車の扉を開けイブキを呼んだ。
「さあ、感動しているところ悪いですが時間ですよ。貴方も乗りなさい、イブキ」
「ーーあぁ、わかった!」
元気よく答えたイブキのその顔に、マシューは苦笑を零す。
まるで新しい玩具を与えられた未成年の顔の様だと思うマシューの心情等知る由もなく、イブキは噛みしめる様に金の雲を見上げ馬車へと乗り込んだ。
女の国の模様が幾つも印刷された上物で革張りの椅子に腰かけ、荷物を下ろす目の前のマシューにイブキは声をかけた。
「ところで、あんたに詳しく聞きたいことがあるんだが」
「構いませんが…おや、貴方荷物はそれだけですか?」
「殆どいらないと言ったのはあんただろう…これから何処へ向かうんだ?」
「ああ、その説明をしませんでしたね…お待ちください」
黒いアタッシュケースから小さな箱を取り出しそこから宝石を一つ取り出したマシューはそれを自身のポケットに入れてケースを自身の横に置き漸くイブキの目の前に腰を下ろした。
長く大きなマシューの足がイブキの膝を割る様に強引に入り込む様にイブキは戸惑い、着物の割れ目が垣間見えそうになるもマシューは特に気にする様子もなく足をのびのびと伸ばし寛いだ。
「それで?なんでしたっけ?」
「ちっ…ああくそ、もうなんだっていい」
「まあまあ、そう拗ねないで…イブキは案外短気なんですね」
「お前が自由すぎるんだッ」
イブキは悪態をつきながら自分の羽織っていた上着を脱ぎ、股を広げる自身の足にかぶせ着物の割れ目から自身の足が見えるのを隠した。
そんなイブキに微塵も臆することもなく、マシューは頬杖をつきイブキを見下ろした。
「私の役目に関しての話は、もう貴方にお話しましたね?」
「あぁ…その世界に存在する黒点を排除、消滅させる事がお前の使命であり救世主にとっての役目なんだろ?」
「左様。では排除し終わった”その先”の話はしましたか?」
「”その先”…?」
「そうです。救世主は一世界に存在する黒点がその世界の崩壊を危機する時に降ろされ排除し、救出していく。では、その黒点がすべて排除し終わったら?」
「…ハッピーエンド?」
「ふっ…そう、そして次のステージへと向かわねばなりません」
そう言いながらマシューは馬車の中にある小さな窓ガラスからカーテンで閉め、外の景色からの視覚を遮断した。
向かい側のカーテンも閉めたところで、マシューは再度イブキに向き直った。
「即ち、別の世界へと向かわなければならない」
「…おい、まさかそれが”今”とは言わないだろうな?」
「左様!嗚呼、物分かりがよくて大変助かります。イブキ、貴方の言う通りこの世界の黒点は馬吉良の持つ黒点で最後…いわば、この世界に存在する黒点は全て私が排除しました」
「その証拠がこちら」
そう言ってマシューはポケットから先程ケースから出した小さな金の装飾の施された宝石を取り出す。
美しいダイヤモンドの様に何の濁りもないその白く美しい輝きに、イブキは素直に「これが?」と疑問符を投げかける。
「左様。この宝石は魔宝石という私の魔力が注がれた物でこの世界の黒点が消滅するとこのように完全の濁りのない輝きを取り戻す」
「黒点がまだ存在すれば色が濁るということか…?」
「その通りです」
そう言ってマシューが再び自身のポケットにそれを仕舞えば、イブキははたと気付く。ひらめいたのだ。
「……成程、だから悠長に黒点がない状態でも俺の国に一週間滞在していたわけか」
「そういう事です。なので私たちはこれから別世界に飛ばなければならない、その為に必要な条件は三つ」
「一つ、その世界から黒点が全て消滅していること。二つ、二名以下で地平線を跨がねばならない事。三つ……」
カーテンの隙間から太陽と地平線が重なり青白い光が一瞬カーテンの隙間から差し込んだ。
”誰にも姿を見られてはならないということ”
音もなくマシューがそう呟いた刹那ーーーー…
パンッ!と車内を照らしていた電球が割れ、突然の暗闇がイブキを襲った。
思わず立ち上がれば頭をぶつけると思っていた筈の天井も空振り、いつの間にか馬車が走っていったときに聞こえていたタイヤの音、馬の蹄に外の自然音でさえ全て消えていた。完全な無音である。
一気にイブキは不安の焦燥感に駆られ、思わず前に手を伸ばしマシューに呼びかけようにも動きがどんどん鈍く、遅く、遅くなっていった。
呼んだはずの名前も、口を開く事もとても遅くついには声も発せない。前へ走り出そうにも足は海深く水中で動いているように重く遅いのだ。
突然の状況にパニックになり、イブキはどうすればと鈍い動作で辺りを見渡すも視界は真っ暗でその先にはなにも、
「!」
なにもないその先で、何かが動いた。
黒い景色の中、その黒は波打つように動き危険も顧みずその先に駆け出したイブキに見えてきたのは緑黄色に光る横一文字の地平線だ。
何故か頭がそこに行かなければと本能がイブキを突き動かす。
遅い足取りのまま、無我夢中で足を動かせば次第にその光は強いものになっていた。
もうすぐ、もうすぐであの光に届くーー…イブキは必死に前へ手を伸ばせば目の前に広がる幾重ものカーテンがばさばさと波打ちイブキはそこでやっと音を耳に捉える事ができた。
煩いほどに翻るカーテンの音に邪魔されながらもイブキはその光の先に漸く身を投じれる、あと一歩、あと一歩という時にその声は聞こえた。
まって!
ーーー小さな少女の、声だった。
思わず伸ばす手はそのままに足を止め後ろを首だけ確認しようと振り返るイブキ。
だがしかし、寸での所でイブキの伸ばしていた手が何者かによって掴み思い切り光の先へと引っ張られてしまったのだった。
「ーーーっは!!」
そこで初めてきちんと目を開けたと言っても過言ではならない。
今まで見たものは全て夢だったかのように、今がとてもリアルだからだ。
イブキが目を覚まし、荒い息のまま霞む焦点を必死に合わせれば木の天井と淡い橙色に光るシーリングファンが回っていた。
ぱちくりとイブキは瞬きを繰り返していけば次第に呼吸が落ち着いていった。
よかった、自分は生きているんだ…とイブキが身体を左に寝返りを打つと、
「大丈夫?」
「へっ…」
目の前に美しい茶髪の美女が自分と同じように横たわっていた。
美しい赤いアメジスト色に輝く初めて見た瞳の輝きに、そして思わぬ状況にイブキは、イブキらしからぬ素っ頓狂な声が漏れ出た。
イブキの左隣で自分と同じ枕の高さで寝ていたその美女にみるみるうちに顔が赤くなっていくイブキ。それも仕方ない、彼は成人するまで女性と関わって生きてきたが寝室や色恋にはまったく携わっては来ていなかったからだ。
「(口から内臓が出るっ)」なんて不気味な思想が働き世話しなく鳴る心臓の音に眩暈がしそうになるも、それはすぐに部屋の扉が開く音で沈黙した。
「おや、起きましたか」
「ぅおおお!!?な、なんだマシューか…!驚かせるなよ…!!」
瞬間的に上半身をがばっと起き上がらせたイブキに、マシューがにやりと笑いイブキの赤い顔を見つめる。
「おやおや、酷い顔ですね…ジャンヌの寝心地がそんなに良かったのですか?」
「ばっ…!違う、そういう事じゃない!あっ、いや!別にそういう意味で言ってるわけでは…!」
しどろもどろに焦りまくるイブキに、横で一緒に寝ていたジャンヌも起き上がる。
よく見ればジャンヌの服装はなんとキャミソールにミニスカートだけという軽装でイブキはまた驚かされた。
特に胸が、収まりきっていない。大事な部分は隠れているが谷間が、いやそれよりもその規格外な大きさにイブキは不覚にも目玉が飛び出るほどに凝視してしまった。
思わずイブキはまさかと思い自身の身体に触れればきちんと自身の着物を着ていてほっとする。
マシューはそんなイブキたちに対して気にも留めず持ってきた紅茶セットを木製のテーブルに降ろした。
そんなマシューにジャンヌと呼ばれた少女が「マシュー」と小さく呼びかける。
その声に反応したマシューがジャンヌの顔を見れば、先程イブキの顔を見ていた時と同じ表情でジャンヌはマシューを見上げた。
「おかえりなさい」
「…はい、只今もどりました。イブキの見張り番もありがとうございます」
そう言ってジャンヌの傍に歩み、マシューは大きな手のひらでジャンヌの頭をぽんぽんと撫でた。
ジャンヌは変わらず無表情のままされるがまま。その様子にイブキが不思議そうに眉を顰めた。
そんなイブキにマシューは「嗚呼」と気付き、傍に雑にかけられていたジャンヌの上着を手に取り彼女の肩に羽織らせ肩を掴み立ち上がらせた。
「紹介しましょう、彼女の名前はジャンヌ。私と契約を交わした部下の一人です。この世界に降り立った後、貴方が目を覚ますまで貴方の警護をさせていました」
ジャンヌと紹介されたその女性、立ち上がってみれば少女ではなく立派な女性である。
ミルクティブラウンの寝ぐせのついたふわふわとした短い髪。深い赤の混じったアメジスト色の瞳。
小さな顔に白い肌、華奢な身体に似つかわしくない豊満な胸と尻。服は薄桃色のキャミソールにぺたんこな腹には黒いコルセット。
そしてキャミソールと同じ色をした三段フリルのミニスカート、そこから長い脚が伸びておりガーターのリボンのついた網タイツ。
足元にはヒールの高い黒のピンヒールを履いていた。
自身の国にいなかった容姿と服装に思わずイブキがガン見すれば、ジャンヌはゆっくりとその色づいたぽてっとした唇を開かせる。
「…マシュー、新しい人?」
「そうですよ、名前はイブキ。新しく私の部下兼弟子として旅のお供を買って出てくれました。剣術や体術は幼少期習った様ですが戦闘経験は皆無なので貴方がサポートしてやってください」
マシューの言葉にまたも無言で瞬きをするジャンヌに、マシューはジャンヌの頭を一撫でしてから部屋の端、窓のある方へ足を向けた。
そんなマシューにイブキははっと気づき、布団を掴みながら湧いた疑問をぶつける。
「そうだ、俺は馬車の中で気を失って…その後どうなったんだ?女ノ国を南へと南下すればそこは馬吉良が統治する蒲都万ノ国に着く筈だが…」
「おや、まだ寝惚けているのですか?言った筈ですよ、私は次の世界へ降り立つ条件を…」
ーーー”誰にも姿を見られてはならないということ”
その言葉が脳裏に蘇るや否や、マシューは窓に閉められていた部屋の大きなカーテンを勢いよく開けた。
其処には蒲都万ノ国にある筈の瓦で揃えられた大屋根家等の木造住宅が並ぶ古風な街並みではなく……
「ようこそ、イブキ!此処は第二の地平線、青の国と称された国"ブラウアーヒンメル"へ!」
大きな窓から見えるのは、空を舞う大きなウミヘビ。
三角屋根の白い家が並び女性も男性も一緒に街を歩み、空では絨毯に大勢が座って運ばれていた。
昼だというのに青空には星が瞬きよくみたら金の雲もない白い綿毛のような雲が浮いている。
そして極めつけは、太陽が三つあるということ。
不思議で怪しくそれでいて賑やかなヴァイオリンの音色にイブキは興奮のあまり己の唇を噛んだ。
異国の匂い、それがイブキをどれだけ刺激しているのかマシューには手に取る様に理解できていた。
Blauer Himmel
(さあ、支度をなさい!街へ出掛けますよ)
(わ、わかった!すぐに着替える!)
(……)
(初対面で悪いが女だったら後ろを向いていて…ああ、いい。俺が後ろに回る)
(……!この紅茶、おいしい…)
(そうでしょう、先程茶葉を仕入れたばかりですので)
(…あなたも、飲む?)
(あああ着替えてるからこっちを向くなあああッ)
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