鮮迷な彩の糸

レー・NULL

貴方の同居人は元気ですか?

 自分には同居人が居る。その同居人は死を望んでいる。いつでも殺そうとしていて、それはとても怖い事だ。


 死という概念、その物は恐怖なんてものを生まない。問題は、無知であるという事。その先を知らない故に恐れる。簡単に言えば、想像も出来ないような痛み、そんなものを好んで受けたいとも思わないし、死後どうなるのかもわからない。死は恐怖を生まない、死の無知の部分が恐怖となるだけだ。


 同居人にも怖いものがある。それは生だ、故に自分を殺そうとするのだ。正確には違う、生という概念そのものは恐怖を生まない。その先を知らない故に恐れる。簡単に言えば、未来に対する恐怖。生きていればどんな苦痛が、何時やってくるかもわからない。生は恐怖を生まない、生の無知の部分が恐怖となるだけだ。


 つまり、同一人物は、同じことで正反対の結論を出した。このままでは正気を保てないことも知っている。今の生死を感じるための儀式も、周囲には理解されなかった。お互いに、このままではいけないと理解していた。だからこその、お互いの理想を叶える方法を見つけた。薬で眠る。それだけだ。


 計画は失敗した。目的とは違うが、薬によって体が鉛になる感覚、体が自分のものでは無い感覚。それは癖になるものだった。しかし、それはやはり受け入れられる事は無かった。


 現在。色々と面倒だと結論を出し、惰性に任せて好きな時に眠ればいいやと、思考を放棄した。それでも、時々思い出したかのように、同居人は刃物を突き付ける。その度に、気持ちは揺さぶられる。


 聞かせてください。貴方の同居人は元気ですか?

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