手順14 事前連絡をとりましょう
「確かに岡崎先輩は良い人かもしれないけど、やっぱりボクは女の子の方が良いな」
「ぐっ……だよねえ……」
「つづら?」
ボクが素直に答えれば、途端につづらはその場に崩れ落ちてうなだれる。
「……確かに杏奈ちゃんは可愛いけど、杏奈ちゃんは私の方が先に目を付けたんだからね!」
そして、少し間を置いて顔を上げたかと思えば、抗議するように言ってくるけど、上目遣いでそんな事を言われても可愛い以外の感想が浮かばない。
「落ち着いてよつづら、杏奈先輩はボクのタイプじゃないし……」
「え、そうなの? あんなに可愛いのに?」
ちょっと照れながらボクが言えば、つづらはきょとんとした顔で首を傾げる。
「その……ボクはもっとふわふわした感じの子が好きというか……」
「うーん、良くわからないけど、つまり尚ちゃんは杏奈ちゃんを狙ってる訳ではないんだよね?」
「うん」
「そっか~良かった~」
ボクが頷けば、つづらはあからさまに安心したようだった。
「それで、明日はどこに行くの?」
「それはついてからのお楽しみだよ~、あ、でも動きやすい服装で、靴もスニーカーとかの方がいいかも」
行き先を尋ねれば、もったいぶったようにつづらは言う。
「ふーん、じゃあ明日は楽しみにしてるね」
「うん、明日はお昼食べたらすぐ出かけるから、そのつもりで準備してね」
「わかった」
つづらの言葉に笑顔で頷いたボクは、その後部屋に戻ると、早速ラインで寺園先輩に通話をかける。
明日の予定の詳細を聞くためだ。
「もしもし? そろそろ連絡くる頃だと思ったよ~♪」
寺園先輩はつづらから話を聞いたボクが連絡してくるのをわかっていたようだった。
「あの、姉から明日の話を聞いて一緒に行く事にしたんですが、明日ってどこ行くんですか?」
「ありゃ、そこからか」
「はい、姉についてからのお楽しみだって言われて……」
「じゃあそのままお楽しみにしてなよ☆」
どこかからかうように寺園先輩は言ってくる。
「いえ、明日は岡崎先輩も来るみたいですし、何が起こるかわからない以上、できるだけ事前に情報は集めておきたいんです」
情報は多いに越した事はない。
第一、ボクはその為に寺園先輩に連絡をいれたんだ。
「前から思ってたけど、尚くんってホントにつづらちゃんの事好きだよね~♡」
「そうですがなにか」
「開き直ってきたね、そういうのは私好きだよ☆」
ボクの返事に、寺園先輩が電話越しにクスクス笑うのがわかった。
「明日行くのは渋谷だよ♪ 360度見渡せる立体映像を使った体感アトラクションで遊べるVRパークって施設があるんだけど、そこに二人で行かないかって木曜日に誘われたの」
「……やっぱり、最初は二人きりだったんですね」
だとして、なんで他にも一緒に行きたがる男はいそうなものなのに、なんで岡崎先輩だけ一緒に行く事になったのか。
「うん☆ でも、それを聞いてた響くんが女の子だけだと危ないから自分も行くって言ってくれたの♡」
「それ、つづらと出かける口実が欲しかっただけなのでは……」
「だろうね。その後他の男の子達も心配だから自分も行くとか、一緒に行きたいとか言い出して、私とつづらちゃんを入れて八人の大所帯になりかけちゃった☆」
楽しそうに寺園先輩が言う。
やはり希望者はたくさんいたようだ。
「それで、どうやって数を絞ったんですか……」
「その日は私とつづらちゃんが一緒に行く事だけ決めて、他のメンバーは保留って事にしたの。人数が多すぎても動きづらいし、多くても私達入れて四人くらいがいいよねって言ったら、つづらちゃんも同意してくれたの」
「まあ、姉としてはむしろ寺園先輩と二人きりになりたいでしょうしね……」
「響くんって柔道部のエースだったりするんだけど、やっぱり防犯の面で言ったら響くんかな~、でもどうせなら話してて楽しい人の方がいいかな~どうしようかな~とか本人の前で悩んでたら、土下座されたよ☆」
「……なるほど」
なんて鮮やかな手際なんだ。
「だから、日曜日に二人で出かけるかわりにつづらちゃんに響くんと、ついでに尚くんを推薦したの♪」
「ありがとうございます!」
寺園先輩にお礼を言いながら、僕の胸がちくりと痛む。
だって、ボクが呼ばれたのは、本当につづらが言っていたように寺園先輩の計らいでしかなく、そこにつづらの意思はなかったということだから。
「うんうん、尚くんは素直で良い子だね♡ それじゃあ、明日何をすれば良いのかわかるかな?」
「ボクは出来るだけ姉を引き付けて、寺園先輩が岡崎先輩と二人になれるようにする……ですね」
「察しが良くて助かるよ~♪ それじゃあ、明日はよろしくね♡」
寺園先輩との通話をきると、早速ボクはクローゼットを開いて明日着て行く服を選ぶ。
とにかく、せっかくのチャンスなので明日はなんとしても爪跡を残そうと思う。
あと、岡崎先輩のその後も気になる。
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