第5話「ネコとネズミのニオイ話」
ところであなた、家に猫います? サバトラの白? いや、袖の所に猫の毛ついているので……いろいろなことを調べる臭気判定士は細かい変化を見逃さないんです。いや別に猫のニオイがするってわけじゃなくて。
ペットのニオイ? 確かにペットのにおいについての相談は来ますよ。ただ、賃貸で住人が無断でペットを飼った物件で、しつけが悪かったものでそこら中にオシッコしてしまったので次に貸せないって内容がほとんどですねぇ。
猫はオシッコ臭、犬は動物臭が苦情になりますね。特に猫はオシッコが濃い動物で……。元が砂漠地帯に住んでいた野生動物ですから、水を無駄にしない体の構造になっているのですね。ハムスターなんかもそうだ。あれは水なしで、野菜だけ食べて生きていられます。
猫はですね、オシッコにタンパク質が出ちゃう珍しい体の構造をしています。『コーキシン』ってタンパクで……いや好奇心じゃなくて。そのタンパク質がですね、『フェリニン』っていうまた猫独特のアミノ酸を作るんです。
普通の生物だとタンパク質やその原材料のアミノ酸は、もったいないから腎臓で回収してまた使うのですが、何故か猫はそのままオシッコで出しちゃうんですね。やっぱり猫は異次元生物かも知れませんねぇ。
はい? ああ、ウチにもいますよ。初代は元ノラのでっかい長毛キジシロで、二代目もノラだけど子猫の時に拾ったキジトラ。最近よく見かける模様です。
私は昔ネコ毛アレルギーで、女房の実家にネコが2匹いましてね。正月に挨拶に行くと1時間くらいで目は真っ赤鼻はズルズルになったのですよ……ネコは好きだしネコにも好かれるんですけどね。
そんなだったのに、家にネコが住み着くと平気になっちゃった。慣れたのか免疫ができたのかわかりませんが、不思議です。
ノラでも猫用トイレってのはわかるようで、二匹とも置いたらすぐ使いました。まあネコ的に使いたくなるモノなのでしょうね、あれは。
だからトイレのお掃除さえしっかりやっていたら、爪研ぎは別として家中猫しっこ臭で壊滅するような事態にはならないはずなんです。普猫ってのは不潔なのを嫌う動物ですから、不潔な猫ってのは飼い主が悪い。
仕付けがなっていなくて、オスで、去勢していないと。もうこれは家を一軒使い物にならなくしてしまうこともあります。あっちにもこっちにもオシッコスプレーまき散らしますからね。壁のボードは爪とオシッコでボロボロ、フローリングは腐って膨らんでいたり。そんな現場だと夏場は目にきますね。アンモニアが。
え~と。どこまで話しましたか? あ、そうだ『フェリニン』だ。フェリニンって物質は猫のフェロモンに関係する物質らしいです。だから縄張りとかメスの引き寄せとか、いろいろな目的でオス猫はオシッコをする必要があるんですね。
フェリニンって物質と、それが体の中で生成される仕組みまではわかったみたいですから、何年かすると『無臭オシッコ猫』ってのが開発されるかも知れませんね。
その、猫が使うトイレ砂ってのは、いろいろありますよね。鉱物のゼオライトを使ったのとか、木のチップとか紙の粒とか、最近は『おから』を原料にしたのもあります。
私のところでもいろいろ試しましたけど、紙の粒に消臭成分を添加したタイプのものが一番良かったようです。やはり尿の吸収スピードと吸い込んだ後の保持力は紙ですね。
トイレの砂が汚れると。猫はそこを使うのを嫌がって、別の場所をトイレにしてしまうこともあります。だから「オシッコ玉」はこまめに捨ててやらなくてはいけません。
特に『ゼオライト』という鉱物系の砂は。オシッコがしみこんで玉になった後、においが出るのが早いようです。それに、トイレ容器の底に尿石とトイレ砂が混じった固い結晶ができてしまうと臭いし取れないしで、もう大変です。
まあ尿石は、ゼオライトでなくてもある程度発生しますね。はい? ああ、尿石の退治方法ね。酢かクエン酸にしばらく浸してタワシでこするか。一番良いのは昔ながらのトイレ洗剤『サンポール』ですよ、あれ塩酸ですから。原液のまま結晶にかけてしばらく置いておけば綺麗に取れます。ただし金属のところにはサビや変色が出ますから使えません。
そう言えば尿石は、ハムスターのトイレでも発生しましたねぇ。ハムスターのオシッコは猫よりアンモニアがキツかったような気がします。
昔飼っていたのは脱走の名人でした。カゴの扉を、一応簡単な留め金がついていたのですが。開けちゃうのです。気がついたらカゴにいなくて冷蔵庫の裏当たりでゴソゴソ音がしてる。あれは焦りますねぇ。かじって何を壊すかわかったものじゃない。仕方ないから冷蔵庫ずらすと「なに~?」って言いたげにノコノコ出てくるんですよ。あれはもう怒る気もなくなります。
一度、和室の箪笥の裏に入られてしまったことがあって。下はタタミだから、もうハムスターの巣材の宝庫です。はやく捕まえたいけど箪笥動かすのはムリなんで、思いついたのが餌で釣ることだったんです。
長い串か何かの先にカマンベールチーズをちょっとつけて、奥に差し込んでみるとすぐに何か手応えがあって。そのままそーっと引き出したら、案の定ハムスターが串をつかんだまま出て来ました。あいつらは前脚を手に使えるから面白かわいいです。
ハムスターカゴの手入れについては、新聞紙を細かく裂いたのか柔らかい草の素材が防臭効果が高いですね。どっちも燃えるゴミで処分できますけど、最近は古新聞ってものが手に入りにくくなりましたね。新聞自体があまり出回ってない。
あ、ハムスターの場合には寝床を完全に綺麗にしてしまうと逆にストレスになるそうです。自分のニオイが付いている場所じゃないと安心して眠れないのでしょうね。
つづく
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