第26話
「――ま、ワタシらはいつまでも、よっちゃんの友だちだから。何か困ったことがあったらさ。いつでも相談してよね。うまく答えられるか分からないけれど、力にはなれるはずだから!」
「ありがとう、みやちょん! さっそくで申し訳ないんだけど、実はなつが――」
「しつこいよ、よっちゃん。なつとナニがあったのかは知らないけど、あの子は悪い子じゃないんだから、話し合えば見えてくるものがあるんじゃないの?」
ええっ……でもぉ。
と、云う風に狼狽える四葉。親友と謳っていたはずもの同士が、どのボタンを掛け違えばここまで気まずい感じになれるんだ。指ちゅぱシーンを誤解してんのか?
おっと、これはオレの恥ずかしヒストリーだ。蔵にぶん投げておこう。
三沢も三沢で、元親友に軽く拒絶されている分際でよくもまあ、臨海学校という夏の一大イベントで、同じ班としての活動を目論めたな。素直に尊敬する。
オレが四葉のポジションだったら、当日は仮病を使って家でゲーム三昧だろうな。気まずい相手に正々堂々と向き合える自信がない。
「ならさ。あえて1対1のミーティング、セッティングしちゃう? いまの時代ならパソコンとカメラとマイクさえあれば、気軽にオンライン対談できるけど?」
「教室でさえまともに会話できないんだから、ウェブ上で顔合わせなんか余計ムリだからぁ! ……話すにしても、向こうがどう思っているか分からないし」
「じゃあ、余計に言葉を交わさないとダメだね。人狼ゲームでもそうでしょ? ちゃんと村人としての思考を述べないと、騎士だろうと潜伏狂人だろうと吊られるって」
「うーん。確かにそうかも。騎士は役職者や白を守るために、潜伏狂人は盤面を理解しながら黒と白を見分けるための思考を落とさないと、吊られちゃうもんね」
なぜ、あやっちが人狼ゲームで例えたのかは不明だが、意外にしっくりくる説明だった。四葉も三沢との向き合い方を変えるみたいだし、ふたりの間を別つ蟠りが早くなくなるといいな。
「うんうん。思い直してくれて何よりだよ、かなたたん。かなたたんの幸せはウチらの幸せでもあるから。派手に転んだら消毒してあげるからね。臨海学校にちなんで、近くの砂浜で思い切り海水ぶちまけてさ!」
「……だから、なんであやっちはよっちゃんが大失敗すること前提なの?」
「そうだよ、あやっち。泣きっ面に塩はやり過ぎ!」
「まあ、塩は目に沁みるけど……正解は『蜂』ね。かなたたん、恋愛にかまけすぎて学が足りてないんじゃないの? 臨海学校が終わったら、すぐ実力テストだよ?」
「わー!? ヤな現実思い出させないでッ! あやっちのバカ~!」
ふ。微笑ましいな。第三者目線で、はにかんでみせる。やっぱり女子同士の会話って、眩しくて煌びやかで爽やかな感じがして、すごくいいな。
不審者みたいな感想しか思いつかなかったが、ここでオレが話に介入してみろ――百合に挟まるゴミカスにまで成り下がってしまう。異常分子はせいぜい雲散霧消がお似合いだ。
――とにかく。
四葉がオレの班に入るのが確定になってよかった。あやっちとみやちょんには感謝してもまだ足りない。タピオカおでんくらいなら奢ってもいいかもしれない。
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