第24話
「――四葉。オレは、女子のクラスメイトのなかで、四葉といちばん仲良くしたいと思っている。普段の学校生活ではあんまり表には出していなかったが、こういうイベントごとならチャンスがあるかと思って、誘いに乗じた次第だ」
「えっ……え!? よっちゃん……! これ、ワンチャンどころのあれじゃないよ! むしろ、ビックウェーブの到来だよ!? どうするの、これ! どうしちゃうの!?」
「その波、乗らない訳にはいかなくない? 恋する乙女の散りドキはいつだって、ビックウェーブの先にあるんだしさ。越えられない波に乗ってこその悲恋じゃない?」
「なんで散る前提なの……? もしかして、あやっちって、人狼なの? 応援していると見せかけて、よっちゃんの恋愛道中膝栗毛をむしり取ろうとしてる??」
ラブホリック系女子の仰っている言葉の意味を理解することはできないが、四葉がオレのグループに緊急参戦することに、世論が傾きつつある。これは俺にとってもチャンスだ。
四葉には悪いが、このまま甘い誘いをラフレシアのごとくさせてもらう。四葉がオチるのはたぶん、時間の問題だろう。周りが煽れば煽るほどボルテージが高まっていくのを感じる。
いまのオレは、さながら新入生歓迎会で後輩女子に、あらゆる手段を用いてでも酒を飲ませようとする、送り狼系テニサー男子。もしくは、ひとり暮らし始めたての男子大学生宅にピンポンを鳴らす、宗教勧誘の親切風セクシー女性。
いわゆる、クズの魂をオレのなかに引き寄せる――。
「先日のバス遠足……オレは四葉と班を組めて最高に楽しかった。その煌びやかな日々をもう一度過ごしたいと思っている。四葉はどうだ?」
「お、おお……よっちゃん、これ、もうマジの告白だよ! プロポーズに限りなく近い愛の告白だよっ」
「みやちょんの言う通り、これはもう、秒読みだね。カップルの成立から始まり、学生内での妊娠騒動、そして突然の退学、労働者の誕生、健やかな日々……!」
外野がうるさい――が、ノイズに見えて実は四葉の選択に迷いを生じさせているから、ある意味プラスに転じている、気がしないでもない。
焚き付けろ、あやっち! もっと高めろ、みやちょん!! 行けえええ!!! 走れえええ!!!! 突き進めえええ!!!!!
「けっ、賢一くんがそこまで言うなら、私。賢一くんのグルメンになったげる。先に誘ってくれたあやっちとみやちょんには悪いけど……」
「いいよ、いいよ! 全然いいよ! 唐突なスカウトにはびっくらこいたけど、壱河学級委員の意向なら、ね。かなたたんの積年のあれもあるしね。発散しておいで!」
「大丈夫、大丈夫。かなたたんがビックウェーブに巻き込まれてサーフィンボードがどっかに行っちゃっても、ウチらで見っけてあげるから!」
「だからなんで散る前提なの……?」
――よし。四葉のスカウトには成功した。これで三沢の意味深なニヤニヤから逃れることができる。おかえり、平穏な日常。さよなら、共犯者生活……!
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