第21話
『わたしは二取くんとデートしているから、雄二はかなたとデートしておいて!
W浮気デートだね またキスとかされたら精神崩壊しちゃうかも( ;∀;)』
それが、なつからのメッセージだった。顔文字とか使えるようになったんだ。あの機械音痴のなつが……。
なんだか感慨深いようにも思えるが、騙されてはいけない。文章自体はしょうもない。なんだよ、W浮気デートって。学校サボってまですることなのか?
「あのアマ……。サイテーの屑NTRファンキービッチじゃない。しかも器用に文章をヒトによって書き換えているし。アリバイトリックの手口よ、完全に」
「ちなみに、五反田さんのなつメはどんな内容だったの?」
「なつメって、なつからのメッセージの略? 2世代前のギャルの魂でも心に飼っているの? ……ほら、これよ」
『ほたるちゃんはいまわたしの隣でリンデポングをムシャ食いしているよ( ´∀` ) 写真の送り方が分からないから今度見せてあげる。もしくは想像で補って!』
「……あ。この、”ほたるちゃん”っていうのは、あなたの界隈で云うところの”二取くん”に相応する呼称だから。彼女の本名は二取蛍。まさかほたるも名字が変わっていたことには驚いたけれど」
「”も”って? 五反田さんもその、名字が変わった経験が?」
「逆に弐宮くんにはないのね。まあ、確かに浅い人生を送っていそうだものね。幼なじみと親友が陰で乳繰り合っているようでいなかった、みたいな平和ボケしたあさ~い人生をね」
「ははは。笑い話で済んだから良かったけどね。……その、言いたくなかったら言わなくてもいいんだけど、五反田さんの両親は離婚しちゃった、とか?」
「プライバシーにずけずけと入り込むようなヒトだったっけ、弐宮くんって。……なつの影響かしら。離婚ではないけれど、パパが殺されちゃったから五反田の養子に入れてもらっただけよ。パパの親友が良家の生まれで助かったわ」
「殺され……!? そんなことが!? っていうか、辛いことなら言わなくてよかったのに。想像の3阿僧祇倍も重い事実が飛び込んできたから、危うく五臓六腑がぷ〇ぷよの要領で全消しになるところだったよ」
面白いことを言うのね、弐宮くん――そう言って笑う五反田さんは、とても強いヒトなんだなと思った。とても深い悲しみを乗り越えた強さを持っている。
少なくとも、僕みたいに浅い人生しか送れないやつが、五反田さんと同じ状況に陥ったら、立ち直れないんじゃないかと思う。平和ボケした問題にすら、1人で立ち向かえなかったんだから……。
「あたしのことはいいのよ。それより、このアホみたいななつメ。まだ続きがあるみたいよ?」
「続き……?」
なんだ、これ。めちゃくちゃ改行されてある。なんの意図があるのか分からないが、何かが書かれてあったとしたら、それを無視するのは心が少しだけ痛む。
なつ――何も書かれてなかったら――もしくは、しょうもないことが書いてあったら許さないからね。
『P.S. 追伸:かなたを臨海学校の班に入れたいから誘っておいてくれるかな。
このミッションがクリアできたら、なんでも好きなものをあげるよ(∩´∀`)∩』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます