第13話【閲覧注意】

「やあ、なつ。今日は早めの登校だね? 僕なんて久しぶりに賢一とふたりで来ちゃったよ。さいきん暖かくなったから、衣替えをしちゃってもいいかもね!」


「あ、うん。そうだね」


 さっきまでゆきと談笑していたはずの雄二が、脈絡もなく今度はわたしに話しかけてきた。なんなんだ、いったい。今日はなんだかプレイボーイが過ぎる。


「なつは今日、日直だったっけ。クラス日誌を書くのは大変だろうけど、頑張ってね! 埋めることがなかったら、七草先生に対する質問でもいいみたいだからさ」


「ふーん、そうなの」


「あ、あと、昨日のことだけど――」


「ごめん。もうわたし、行かなくちゃ。保健委員の集いがあるし」


 暖かくなったとはいえ、まだ晩春だ。それに、今日は日直じゃない。夏が近いというのに、何を言っているんだ。もしや、暑さでおかしくなったんじゃないか。


 廊下に出てしばらく経ち、この時間帯は委員会活動がなかったことを思い出す。始業のチャイムが鳴るまで、どうしよう。教室に戻るのは嫌だ。雄二が居るから。


   *


「もう……なんなの!」


 あれから、ことある毎に雄二に話しかけられた。昨日のテレビが面白かっただの、中学時代の友人がどうなっているだの、他愛もない話を延々とされた。


 かなたとゆきを懐柔するだけでは飽き足りないのだろうか。もはやプレイボーイどころの騒ぎじゃない。いったい、どこでそんなメンタルを育てたんだろう。


 ――いや、そんなのどうだっていい。


 だって、雄二はもう、わたしの幼なじみじゃないんだから。


「……あ、居た! なつ、いまちょっといいかしら?」


「久しぶりだね、ゆき。昨日のバス遠足以来かな?」


 わたしの会いたくない人ランキングにリストアップされている人が悉く目の前に立ち塞がってくるのは、朝の占いが良くなかったことと関係ありそうだ。


「あら。キノウノワダイはタブーだって弐宮くんから聞いたのに」


「そんなことないよ。バスのなかでのことはぜんぜん楽しかったし」


「壱河くんと結託した、不正しまくりの王さまゲームなんか最高だったでしょ。あたしは久しぶりにビンタできたし、あなたはみんなの前でいちゃいちゃできた」


「でもそのせいで、わたしは本編である遠足のほうを楽しめなかった」


「バスではしゃぎすぎなのよ、あなたは。車内で吐かなかっただけマシじゃない?」


「保健医の先生に見られたよ……わたしが朝食べた、未消化のうどん」


「どうして詳しく言っちゃうの? あなたが吐いたものを想像しちゃったじゃない」


 ホントだ、なんで言っちゃったんだろ。

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