第24話
バス遠足が終わって、翌日。
なつとはメールや電話さえできずに、待ち合わせ先の公園でふたりが来るのを待っていた。僕が最初で、次になつ、最後に賢一が来るパターンが多いのだけど――。
「よう、雄二。三沢は日直で早めに行ったらしいぜ」
「え。そんな連絡、僕はもらっていないよ?」
「幼馴染のお前を差し置いて、オレだけにメールとは……昨日のバス遠足の件、まだ怒っているんだな、三沢のやつ」
そうらしい。なつが学校に遅刻するときは、僕にもメールが来る。今回みたいに仲違いしていなければ、だいたいの確率で。なつはああ見えて機械音痴だから、流行りのSNSやアプリなんかは上手く使えない。そこがちょっぴり愛おしくもある。
「やっぱり、なつと一緒に遠足を楽しめばよかったのかな?」
「雄二。お前は三沢の体調を気遣って、安静にするよう言ったんだろ。だったら、もしものことを考えるな。あれが、お前や三沢にとっての最善策だったはずだ」
「うん、そうなんだけど……なつを悲しませちゃったのは事実だからさ。なんだか胸が痛むんだ。実は昨日もあまり、眠れなかったんだよね」
「ったく、お前ってやつは……自分の力を軽んじているぞ。少しは自分を信じてみろ。自分のしたことは間違っていないって。胸を張って強く生きろ!」
そう言われてすぐ、賢一に肩を強く叩かれる。その痛みを覚えながら、僕はまた賢一のやさしさに触れる。――胸を張って強く生きろ、か。僕には少し難しいな。
なつの居ない通学路を歩き、学校へ向かう。男同士の会話は心地よい。気を遣う必要がないし、話題の気まずさに心をすり減らすこともない。――だけど。
「……やっぱりなつが居ないと、僕はダメなんだな」
「じゃあ、謝らないとな。三沢のやつ、般若ばりに怒っているぞ」
「うん。なつはああ見えて、怒ったら手が付けられないんだ。もしかしたら、その怖い形相だけで、近所の子ども5人くらいを泣かせられるかもしれない」
「そんなに怖いなら、見てみたい気もするが……三沢の前では言うなよ。たとえ幼馴染のお前でも、容赦なく泣かされるかもな。女っていうのは怒ったら怖いんだ」
賢一も賢一でそういう経験があるらしい。妹のゆりちゃんだろうか。とにかく、変な詮索は止めておいて、僕は通学時間で、なつに謝罪する用の言葉を考える。
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