第13話

「賢一くぅん。次はどこに行く?」


「んー。確か予定には、お化け屋敷って書いてあったかな。ここのは子ども騙しじゃなくてマジのやつだから、当時は怖くて入れなかった思い出があるな」


「えー。ワタシ怖いの苦手なんだけど!? もしものために、賢一君の手を握っていてもいい? じゃないとワタシ、怖くて入れそうにないよ~♪」


 すっかり二分化した気まずい雰囲気も、観覧車から降りれば周りの目もあるし何とかなるだろう、と高を括っていたバカは僕です。むしろ恋人ムードは激化していた。


「弐宮君。もしあなたに今後、彼女ができたとして、ああいうカマトトぶる女の子には気を付けたほうが良いわよ。だいたいクレイモアを隠し持っているから」


「ク、クレイモア? それってどういう……」


「ああいうタイプの女はね、異性に好かれようとするあまり、同性に嫌われる典型的なやつなの。つまりどういうことかと言うと、誰とでもヤるってことなのよ」


「たとえそうだとしても、四葉さんがそういう人だとは限らないじゃないか。確かにこの僕でも無関心ではいられないくらい、彼女には負の感情が湧くけど」


 でも四葉さんを傷つける代物ではない。すべて内側で処理できる。僕も男女が恋をする漫画は嫌いじゃないけど、ここまであからさまにされると、嫌悪が募る。


「ほら、そんなところで何をしているの! ゆきもおいでよ~!!」


「雄二も来いよ! 今日は三沢のぶんも楽しむって話したばかりだろ?」


 既にお化け屋敷の受付には、バカップルがひと組待機していた。普段はクールで知的な風を吹かしていた賢一だけど、四葉さんに抱き着かれて、見る影もない。


 完全に表情が付き合いたてのカップルのそれにしか見えない。いつ手を繋ごうか思索する彼氏のそれでしかない。クール崩れの賢一の下心が透けて見える。


「このまま行かないのも彼の反応が新鮮で面白いけれど、どうする?」


「あまり近くには行きたくないけど、行かないと始まらなさそうだしなあ」


 現に受付を済ませているくせに、こちらの出方を窺っているみたいだし。それに、このお化け屋敷に寄ることはスケジュールで決まっていた。行くしかないか。

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