第14話
「えっ……恋人限定のお化け屋敷!?」
「うん。なんかそういうキャンペーンらしいよ!」
お化け屋敷ならぬ装飾がされていると思ったら、そういうことだったのか。順番待ちの列にカップルが多いのは、見間違いでも錯覚でもなかったらしい。
「ちなみに恋人限定って言っても、本当のやつじゃなくてもいいみたいだよ! 例えばこんな風に、恋人みたいに仲の良いふたりなら、性別を問わないってさ!」
「お、おい! あんまりくっ付くなって。恥ずかしいだろ……!」
そう言って四葉さんは賢一と密着することで、恋人の範例を見せてくれた。未だに、彼女のテンションに乗り切れていない賢一の表情が新鮮で面白い。
「――ってことで、ゆきたちも恋人っていう体で挑んでよね! なつも居ないし、いまなら堂々とシンデレラになれるよ、ゆき! ファイトファイト~☆」
「ええと、意味が分からないのだけど……つまり、どういうことかしら?」
「カマトトぶらないでよ~、ゆきちゃん。恋に敏感なワタシを舐めないでよね! 今日くらいは自分の気持ちに素直になりなよ~☆ ワタシは知っているからさ!」
「べ、別にあたしはそういう訳じゃな……!」
険悪なムードのようにも見えたけど、ふたりは仲が良いらしい。心配が杞憂で済んでよかった。それより、なつは何をしているだろうか。僕はそれがまだ気になる。
「あ、ワタシたちの番だ。じゃあ、行ってくるから。ばいばい!」
「またあとでな、雄二。五反田と仲良くしろよ? オレもまあ、頑張るからさ」
そう言ってふたりは変に密着しながら、お化け屋敷のなかへと消えていった。次に僕らが入れるのは5分くらいあと。そのあいだ、五反田さんとふたりきり。
「あの子ったら……どうして変な気を遣うのかしら。別にそういうやつじゃないのに」
「まあまあ。ここまで来たんだし、せっかくなら楽しもうよ。僕はお化け屋敷に入ったことないから、新鮮で楽しみだよ。五反田さんも初めて?」
「あたしを励ましてくれるのは良いけれど、あなたのほうこそどうなの? 先から心ここにあらずって感じで、なんだか抜け殻とデートしているみたいだわ」
「ぬ、抜け殻……はは、五反田さんには何もかもお見通しって訳か。参ったよ」
相変わらず鋭い洞察力をお持ちのようで。僕は彼女から、ポーカーフェイスを習ったほうがいいのかも。隠しごとがすぐに露呈する様では太刀打ちできない。
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