第11話

 七草先生を先頭にした僕らは受付を済ませると、班ごとに分かれ、それぞれの目的のために消えていった。そして僕らの班――僕と賢一、五反田さんとなつの代わりに入った四葉さんの4人――は案内図の前でまだ立ち淀んでいた。


「さて、何しよっか。賢一君はどこか行きたいとこある?」


「え、オレ? んー。遊園地のほうならゴーカートあたりを攻めたいけど、動物園ならライオンでも久しぶりに見てみたいけどな!」


「ゴーカートかあ。良いね! ふたり乗りできるかな? できたら一緒に乗ろ?」


「いやいやいや。ゴーカートの醍醐味といったら、競走だろ?」


 四葉さんは賢一と一緒にゴーカートに乗りたいらしい。なんだかこうして見ると、ふたりは初々しいカップルに思える。微笑ましい光景で、こちらも顔が綻ぶ。


「なにふたりでいちゃついているのよ。爆弾があったら木っ端みじんにしているわよ。行き先はなつが居たときに計画立てたじゃない。最初は観覧車よ」


「最初が観覧車って、ゆき……それはないよ。せっかくのダブルデート形式の遠足なのに、最初が観覧車ってムードのかけらもないよ! そんなの、絶頂寸前でローターの電池が切れるみたいなものだよ!? そういうの謹んでよ!!」


「謹んでと言われても、これがあたしたちのスケジュールだし。今さら変えられないわよ……。ねえ、弐宮君?」


 できれば話題は、僕に振らないでほしかった。四葉さんと目を合わせるのはいま僕がいちばんきつい。たぶんランキングだったら、上位に僕が食い込む。


「う、うん。四葉さんだって、前の班でスケジュール決めたでしょ。その通りに動かないとダメだって。僕らのスケジュールに従えないなら、戻ってもらっても別に……」


「変態君にそこまで言われたら、仕方ないね。分かったよ、ダブルデート的には最悪なプランだけど、従わないとまたナニされるか分からないし」


 あ……やっぱりバスから降りた際に、四葉さんに言ったことは蛇足だったみたいだ。僕に嫌なあだ名が付いている。おまけに、変な誤解まで生じてしまっている。


「変態君? 確かにあの膝枕をしながらの王さまゲームは異端だったけれど、あの命令はあなたが、壱河君のくじの番号を間違えてコールしたせいでしょう?」


「そうじゃなくてさ。こいつ、バスの降り際に求めてもいないのに、ワタシの膝の感想を言ってきたんだよ。そんなの、変態以外に居ないでしょ」


 五反田さんからの手厚いフォローを内心で期待したけど、今回ばかりは冷たい目を向けられた。変態。はあ、下手にあんなこと言うんじゃなかった。

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