第8話

「さあ、みんな。バスから降りて。園の入り口で点呼を取るから、いまのうちに班ごとにまとまっておいてくれる? 車内での忘れ物はないようにお願いね?」


 七草先生の号令を聞いて、僕たちはようやく外の空気を吸うことができた。王さまゲームはあれから数回にわたって繰り返されたが、僕の被害は収まらず、最多で標的になってしまった。神さまに悪いことをした覚えはないのだけど。


「じゃあ、はい。弐宮どけて」


「ああ、うん……ごめん。四葉さんの膝、気持ち良かったよ」


 そのまま何も言わずにバスを降りるのもどうかと思って、ひと声掛けたけどなんだか変な感じになってしまった。次に顔を合わせるのが気まずいな。


「いまの発言はかなりマズイぞ、雄二。完全に言動が変態のそれだ」


「うん……僕も言い終わってから気付いたよ。言わなきゃ良かったかも」


 幸いなことに、僕と四葉さんは同じ班ではないから、今日のところはそこまで顔を合わせることもない。友だちの友だち的感覚だし、あまり問題もないと思う。


「うう、気持ち悪いよぅ。あと10歩くらい歩いたら、吐いちゃうかも……」


「しっかりしなさい。もう少し我慢したら、自販機で飲み物が買えるわよ」


 口を押さえながら青い顔したなつと、そのなつを支える五反田さんが降りてきた。昔から乗り物酔いに弱いところは変わらないらしい。酔い止めを飲んできたとは言っていたけれど、どうやらなつには効かなかったみたいだ。


「なつ、大丈夫? 僕ので良かったら水あげるけど」


「ううん、だいじょうぶ。わたし、遊園地で遊びたいもん」


「大丈夫じゃないでしょ……そんなふらふらしていたら、遊ぶ前に倒れちゃうよ。それに、五反田さんにも迷惑だよ。遊びたいのは分かるけど、まずはその体調をなんとかしないと」


 いまのなつは五反田さんの支えがあって、辛うじて立てている状態だ。五反田さんにも遊びたい場所があるのだから、彼女が常に支えるという訳にもいかない。

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