第7話
なんだか王さまゲームをひとつ終える毎に、僕だけ疲労や恥ずかしさが蓄積していっている気がする。気のせいだろうか。本当に気のせいだったらいいのにな。
「そろそろワタシにビッグチャンスが来ても良いと思うんだけど! 弐宮だけじゃなくて、もっと賢一君とかゆきが辱しめられてもいいんじゃないの?」
「確かにこの2回はずっと、雄二を狙い撃ちしたかのような命令が出てきたが、今回は大丈夫だと思うぞ。さすがに3連続はないと思うしな!」
「あら、壱河君。そんなこと言ったら、神さまがいたずらで弐宮君をターゲットにしちゃうわよ。2度あることは3度あるというしね。そうでしょう、なつ?」
「なんでわたしに振るの……っ? それより早く3回目をやろうよ!!」
なつのひと声で、また賢一がみんなから割り箸くじを集め、手のなかでシャッフルした。女性陣から引いていき、残った2本を僕と賢一で仲良く分け合った。
「よっしゃあ! ワタシが王さまだッ!」
「おめでとう、良かったじゃない。将来の夢が叶って」
「かなたのことだから、際どい命令が出てきそうだなあ……当たりませんように」
四葉さんが王さまのくじを引き当てたみたいだ。彼女の性格を把握している訳ではないので、どんな命令が下されるか不安だ。今度こそ僕以外に行ってくれ。
「ねえねえ、賢一君は何番のくじを引いたの? 教えて教えて!」
「なんで教えなきゃいけないんだよ。俺に命令がしたいなら、俺のくじの記号を当ててからにしな」
「でもさあ、賢一君。2回連続で弐宮が当たって、ここいらで賢一君が命令されてもいいんじゃない? このままだと弐宮だけ役回りが可哀想だよ」
「一理あるな。雄二にも楽しんでもらいたいし、言うか。四葉、オレのくじはDだ」
なんとなくで五反田さんにビンタされ、みんなの前でなつの良いところを発表した。俯瞰で見ても僕のプレイングは、悪魔に愛されているとしか思えないそれだ。
賢一が僕のためにくじの記号を言ってくれた。王さまゲームにおける不正のような気もしないこともないけど、僕はふたりのやさしさにとても感動した。
「ありがとう、賢一君! じゃあ、ワタシの命令だけど、『バスから降りるまで王さまの膝にBが寝る』で!」
「……うん?」
再確認のために、手元のくじを見てみる。B。あれ、聞き間違いかな。賢一の顔を覗き込む。彼もまた驚いている。DではなくB。どうやら聞き間違いではなかった。
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