第4話
「じゃあ、行くわよ」
「うん、いつでも来ていいよ」
五反田さんの華奢な手から放たれるビンタは、とかく強烈だった。過去に何度も食らっているけど、これがいちばんダメージが大きいやつなのかもしれない。
「うわあ、痛そう……だいじょうぶ、雄二?」
「なんか大晦日の落語家を思い出す酷さだな……雄二、生きてるか?」
「大丈夫、大丈夫。まだ舞えるはず」
視界が霞んだまま揺らいでいて、少しだけ頬が腫れているような気がするけど、僕はまだ戦える。たかが王さまゲームで泣く人なんかこの世に居るはずがない。
「弐宮くんには悪いのだけれど、ものすごくストレスを発散できた気がするわ」
「でしょうね。だって、思い切りが女子とは違うそれだったし……ゆきちゃんってドSなの?」
「さあ……自覚はないけれど、さいきん弐宮くんをビンタする機会があって、それでよく感情が昂ることがよくあるわね」
「ええっ、日常茶飯事なの!? 弐宮もよく怒らないね……ドMなの?」
「そんな訳ないじゃない。きっと弐宮くんのことだから、あたしを守るためにやさしく諭してくれるのよ。まるで元ヤンの極道教師みたいにね」
強く否定しようとすると、当人からの擁護があって僕も嬉しくなった。ちょっと違うような気もするけど、ニュアンスとしてはだいたいそんな感じだからセーフ。
「じゃあ、さくっと2回目行っちまうか! 次も王さまになってやるぜ」
「そう簡単になれないわよ。次になるのはあたしよ!!」
「まあ、そんなこと言っても一律20%で誰でも、もれなく王さまになれるからね」
自分の運命を信じて、2回目のくじを引く。しかし、結果はD。またしてもD。どうして同じくじを引いてしまったのだろう。せめて違う記号が良かった。
「うふふ。有言実行で、あたしが王さまになったわ! どんな命令を下してあげましょうかねえ……」
「イカサマでもしたんじゃないの? じゃないと、こうなった説明が付かないよ」
「仮にイカサマをしたとして、それを暴けない時点であたしの勝ちよ。まあ、もちろん壱河くんが常に持っているくじに、そんなことはできないのだけれど」
「まあまあ……落ち着いてよ、四葉さん。僕みたいに同じくじを引いた訳じゃないのなら、まだ運が良いほうだよ」
言い終わって、すぐに自分がしでかしたことに気付いた。なんで自分の記号を暴露するかのような真似をしてしまったのだろう。後悔先に立たず。
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