第3話
割り箸に記号が描かれたくじを順番に引いていって、【王さま】と描かれたものを引いた人がそのターンの王さまである。それを引き当てた者は、他の記号くじを引いた者に対して、逆らうことのできない命令を言い渡すことができる。
ただし、公序良俗に反しない限りでの命令に限られる。たとえば、ある人を専属の奴隷や家政婦にする……といった命令は、当たり前に禁止ということらしい。
発案者の賢一が丁重に説明してくれたお陰で、やったことのない僕やなつは、だいたいのイメージを掴むことができた。あとは流れに沿ってやるだけ。
「じゃあ、1回目の王さまゲーム始めるか。四葉からくじを引いていってくれ」
「う、うんっ……賢一君。どのくじを引いたか、あとでこっそり教えてね?」
「なんでだよ。それだと、くじの意味がないだろ」
僕の番になると、二本しか残っていなかった。先にくじを引いた女子三人組の反応からして、たぶんこのなかに王さまがある。つまり、半分の確率で王さまになれる。左を選ぶと、賢一は残ったくじをそのまま自分のものにした。
嬉々としてくじの先を見てみたけど、普通に記号だった。A~DのうちのD。残念。あとは、誰にも自分がDだと悟られないように振る舞うだけだ。
「全員引き終わったわね。さあ、王さまは誰かしら?」
「お、オレだ。やったぜ、これで『残りものには福がある説』立証な!」
「え~。わたしが引きたかったなあ。命令もいっぱい思い付いたのに……」
やはり、半分の確率で王さまがあったようだ。とても悔やまれる。
どちらかと言えば僕は、命令をどんなものにするか決めあぐねるタイプだから、まだ王さまじゃなくていいけどね。なつみたいに碌に命令も考え付いていないし。
「ねえ、賢一君。どんな命令をしてくれるの?」
「そうだな。初回だし、ソフトな命令にするか。BがDにビンタ……これでどうだ!」
ぜんぜんソフトじゃないし。しかも、僕がビンタされる側だし。先まで気長に振る舞っていたのがバカみたいだ……くそう、賢一め。恨んでやるからなっ。
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