ハテナが僕らを傷つけた

第1話

「いやはや、今日は晴れてよかったな、雄二」


「うん、そうだね。天気予報が外れてよかったよ」


 入学して初めての課外授業だというのに、今日は降水確率が高く、晴れの可能性が見込めなかった。だけど奇跡的な恩恵に恵まれ、こうして太陽を拝めている。


「しかし、高校生にもなって遠足ってすごいよな。もっと大人びた行事があるかと思っていたからな。オレの友だちの学校では、マラソン大会をやるらしいしな」


「でもこっちのほうが疲れないし、良いんじゃないかな? こうしてバスのなかでのんびりしているだけで、目的地に行けるバス遠足も、なかなか魅力的だよ」


 バスで向かう遠足を、はたして遠足と呼んでいいのかはさておき、座席の窓から眺める景色はスライドショーのように淡々と流れていく。とても、のどかだ。


「なあ、雄二。バスが着くまでに、何か時間を潰せる遊びはないか?」


「え、えっと、僕にはしりとりくらいしか思いつかないなあ」


「王道だな。じゃあ、王さまゲームでもするか。おあつらえ向きに割り箸があるし」


 そう言って賢一は用意周到に、割り箸のくじをリュックから取り出した。自分からゲームを提案しておいて、これとは。いかんせん誘導が下手すぎる。


「王さまゲームをするのはぜんぜん良いんだけどさ、ふたりだけだと面白くないんじゃないかな? 片方が王さまだったら片方は違うって、すぐに分かっちゃうし」


「言われてみれば確かにそうだな。じゃあ、やっぱりしりとりにするか……」


 王さまゲームがふたりではできないことを知ると、賢一は項垂れて肩を落とした。そういうことなら僕も、工夫してできるのであれば、王さまゲームをやってみたいのだけど。


「……賢一くん。わたしも王さまゲームやりたいなあ♪」


「先から見ていたのだけれど、楽しそうだからあたしも混ざっていいかしら? そういうのは多人数でやったほうが、きっと盛り上がるわよ!」


 通路を挟んで左側に席を構えていた、なつや五反田さんが会話に加わる。ふたりが参加してくれるというなら心強い。男だけの空間に花を添えるという意味でも。

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