第34話
それからしばらくして、俯いた状態でなつが戻ってきた。いっぽうで廿六木さんは落ち着き払っていた。タキシードが映えている。彼もまたイケメンだった。
「あの、雄二……」
「どうしたの、なつ?」
向かい合っているはずなのに、なぜだか視線が重ならない。なつが目線を下げて俯いているからだ。何やら言いたそうにしているけど、どうしたのだろう。
「わたしがこれを管理するから、使いたくなったらいつでも言ってね……っ‼︎」
「え、うん……分かった。食べたくなったら、いつでも言うよ」
コンソメの素を使いたくなるときなんて、めったにない気がするけど。それが扱われている料理なんて、片手で数えるくらいしか知らないし。
でもなつが作ってくれるというのなら、僕は喜んで食べてみたい。なつが料理できるのは知っていたけど、なつが作ってくれたものを食べる機会は意外となかったような。
「た、食べ……⁉︎ もう、雄二のバカ……!」
「ええ、なんで……?」
ここまでなつに拒絶されたのは初めてだ。なつは顔を赤くするくらい怒っている。なつが作った料理を食べたいと言ってしまったのが、いけなかったのだろうか。
「さすがは雄二だ……畏敬の念すら抱くぜ、このレベルなら」
「ふふ、青春としか言いようがありませんね。これは完全にわたくしのお陰ですね」
男性陣は相変わらずよく分からないことを言っている。まったく、何なんだ。僕ひとりではどうすることもできなくって、ため息混じりに暗い空を見上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます