第33話

「あ、読める! えっと、コン……」


 最後まで読もうとして、目で文字の列を追っていたときだった。


「……わあ、コンソメの素かあ〜。でも雄二には必要ないものだね! だからわたしがもらっておくよぅ‼︎」


 横からなつが半ば強引にプレゼントを奪っていってしまった。突然のことで上手く反応できず、僕の右手は行き場を失って寂しそうだった。仕方なく鞄を持ち替える。


「何するの、なつ……? それ、僕がもらったやつなんだけど」


「でもこれ、コンソメの素だよぅ。料理しない雄二には必要ないでしょ」


「いや……まあそうだけど」


 なつ曰く、廿六木さんからのプレゼントは、コンソメの素だったようだ。意味深長な言い回しをしておいて、中身がそれとは、廿六木さんも真面目そうに見えて、なかなかにユーモアがあるようだ。誤解していた好感度も元通りになった。


「ファインプレーだ、三沢。非料理系男子の雄二にコンソメの素は似合わないぜ」


「賢一までひどいよ……せっかく廿六木さんがくれたのに」


 というか、賢一って料理できるんだ。さすがはイケメン。何でもできる。


「廿六木さん、ちょっと……いいですか?」


「ええ、構いませんよ。あちらで話しましょうか」


 賢一が料理や勉強、そして運動すらも完璧にこなすイケメンだということを再確認しているあいだに、なつは廿六木さんを連れて池の近くへ行っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る