第8話
クラスメイトの大胆な姿を見てしまって、僕は気が動転してしまった。どこを見て話せばいいのか、ここに居ていいのか、分からなくなる。
「……ええと、弐宮くん? あまりじろじろ見ないでほしいのだけれど。いちおう、あたしだって恥ずかしいのよ」
それならば、タオルか何かで身体を隠せばいいのに。どうして彼女は身を縮めるだけで、まるで僕を困らせるみたいに振る舞うのだろうか。
でも僕は彼女の格好の件に何も言えず、ただ引き下がることしかできなかった。目線を下げ、その、主張の激しいものからなるだけ視界から外すように努める。
「ご、ごめん。ここが脱衣場だとは思わなくて! 今すぐ引き返しますので!!」
「どうして丁寧語なの? というか、あたしの家知ってたのね」
「そ、それは五反田さんが風邪で休むってホームルームで聞いて、プリントとかノートを届けるのになつが名乗りを上げて、それで……!」
なんとなく気配がして顔を上げると、どういう訳か、五反田さんが近付いてきていた。彼女は平然としていて、なんだか自信ありげなように見えた。
「ふふ、可愛いわね。女の子のこういう姿を見るのは初めて?」
「ちょ、あまり近付かないでよ! 近付くならせめて、何か羽織って!!」
だが本能が疼く。彼女のその、たわわな凶器が若干の振動を帯びながら近づいてくる。僕だって仮にも男だ。どうしてもそこから目が離せない。
「弐宮くんってば、モテそうなのに意外と初心なのね?」
「……そ、それより、こんなところ誰かに見られたら大変だよ。だから離れて」
――主に、僕があらぬ誤解を受けてしまうかもしれないという意味で。
にじり寄ってくる五反田さんに、僕は後ずさりすることでしか抵抗できなかった。脱衣場から出ていってしまいたいけど、影が踏まれているみたいに動けない。
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