第24話

「――ちょ、ちょっと待てよ! どうしてあたかもオレと三沢が付き合っているかのような空気を出すんだよ!? 三沢もなんで反論しないで変な嘘を吐くんだよ!?」


「……え?」


 僕が全力で失意に打ちひしがれているというのに、しばし遅れて賢一が声を荒げる。何が起こった? たったいま、ふたりは付き合っていると本人の口から結論が出たはずなのに。


「なつ、嘘なの?」


「嘘じゃないよぅ。本当はわたしたち、付き合っているんだ。だから普通にキスもするし、その先だって――賢一くんは恥ずかしがり屋さんだからなあ♪」


「だから付き合ってないって。それに、雄二や三沢の言うキスだってしてないし!! お前も張本人なんだから、ふたりが誤解することを言うなよな!!」


 どちらが本当のことを言っているのか、僕にはもう分からない。なつが言っていることと僕が見た光景は一致していて、賢一の証言だけが噛み合っていない。


 だけど、賢一はなつに向かって、『嘘を吐いている』と言っている。だとして僕は、どちらを信じればいいのだろうか。また、どちらを疑えばいいのだろうか。


 分からない。幼馴染のなつか、親友の賢一か。僕には、選べない。ふたりが付き合っていることすら知らなかったやつが、簡単に選んでいいはずがないのだ。

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