第23話
「しらばっくれてもダメだよ、賢一。昨日の放課後に僕は見たんだ。キミたちふたりがキスをしているところをね」
遂に言ってしまった。ふたりの前で、このことを。僕が抱えていた、わだかまりのすべてを。三人の関係が壊れてしまうかもしれない、破滅の言葉を。
四人を取り巻く空気は、もはや最悪だと言っていい。そこに友だち同士とは思えないほどの沈黙が漂っていた。重くて、ひとりでは抱えきれないほどに重かった。
「目撃者も居ることだし、そろそろ白状しちゃいなさいよ。別に怒っている訳じゃないのだから、素直になってお姉さんたちに付き合った経緯とかを……」
「……そっか。あのときのあれ、雄二、見てたんだ?」
五反田さんが素直になっているのを遮って、ぽつりとなつが呟いた。表情は曇っているように見える。この夕暮れが綺麗なのに、彼女は少しも風景に溶けていない。
「じゃあ、やっぱりふたりは――」
「うん、ごめん。隠しているつもりはなかったんだけど。賢一くんが恥ずかしいって言ったから、おおっぴらにはしていなかったの」
これで真実は明らかになった。僕が見ていた光景は寸分違わずに真実でしかなく、ふたりは僕の居ない世界で、互いに互いを愛し合っていた。
どこかで期待していた自分も居た。ふたりは付き合っていなくて、僕の勘違いだったと。でも真実は残酷で、どこまでも僕の傷を侮辱する。
なんとか折り合いをつけて、ふたりとは仲良くしていきたいと思っていた。だけど、いざ現実を目の当たりにすると、僕はどうしても笑うことができなかった。
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