第22話

「というか、ゆきと雄二ってお似合いな気がするけどな~。同じ図書委員って言うのもあるけど、わたしが嫉妬しちゃうほどに仲も良いしさ」


 なつの言葉を聞いて、勝利を確信する。僕と、賢一と、なつと、五反田さん。僕と五反田さんが組み合わせとして選ばれれば、必然的に賢一となつがペアになる。五反田さんには穢れ役を背負わせてしまったが、完全に流れはこちらのものだ。


「そうかしら? それを言うなら、あなたと壱河くんのほうじゃないの?」


「えっ、賢一くんとわたし? どうして??」


 ここまで来ると実は、なつの演技力は相当高いんじゃないかってくらいに、彼女の反応は白々しかった。なんだかタネの知っている手品を見せられている気分だ。


「だって、ふたりは隠れて付き合っているんでしょ? あたしたちの目は誤魔化せないわよっ」


「ええ、付き合ってないよぅ。どこからそんなデマが……?」


 五反田さんがなつを追及しているあいだ、一方で僕は賢一の様子を観察していた。彼には意外と優男の血が流れているので、野蛮な嘘は吐けないはず。


「な、なんだよ、雄二。オレと三沢が付き合ってる訳ないだろ。やめてくれよ」


 賢一もなつも妙に演技が上手い。まるで本当に付き合っていないかのような素振りで首を横に振ったり、後ずさりをしたり。主演男・女優賞でも狙っているのだろうか。

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