第21話
「ねえ、賢一。ちょっと訊きたいことがあるんだけど」
「うん? どうした、そんな風に改まって」
「いやね、大した話じゃないんだけど。賢一はさ、好きな女の子って居る?」
機会を窺ってもチャンスが来なかったので、ついに僕のほうから核心に迫るための話題を提供することになった。これから僕は、少しずつ賢一を攻めていく。
「おお、女の子が居る前でそういう話をしちゃうやつだったのか、お前は……まあ、クールで真面目な女の子かな。オレはキャリアウーマンとかに憧れるな」
戸惑う様子を見せる賢一ではあるが、しかし、声を潜めてしっかりと僕の質問に答えてくれる。本質的に彼はとても誠実なのだ。ただ僕はそれに縋っただけ。
「そういえば、学校でそんなこと言っていたっけ。なるほど、キャリアウーマンか。じゃあ、可愛い系よりかは美人系が好きってことでいいの?」
「可愛い系も良いけど、そこは譲れないんだよな、不思議と。雄二はどうだ?」
「僕は特にそういう拘りはないかな。可愛い系も美人系も両方ありだと思うよ」
好きな女の子のタイプの話で静かに盛り上がっていると、女性陣の視線がこちらに向いていることに、ふと気付いた。特になつが、何か言いたそうにしている。
「それなら雄二は、どんな女の子が告白して来ても、素直に快諾するってこと?」
「んー、どうかな。相手のことを知らずに付き合うのは、良くない気がするし」
思惑通り、なつが話題に食いついてきた。五反田さんに協力を仰いでおいて良かった。彼女には感謝しかない。あとは流れを断ち切らずに、核心を突くだけだ。
「さすがはミスター誠実ね。あなたと付き合うとしたら、楽しく過ごせそうだわ」
「ミスター誠実だなんて初めて言われたよ。相変わらず、お世辞が上手いね」
ターゲットのふたりには気付かれないように、僕たちはアイコンタクトを交わした。『好きなタイプ』『付き合う』『告白』。そして、四人の男女。
それらのキーワードを出せば、青春真っ盛りの高校生なら、恋愛に関するディープな話題へと勝手に掘り下げてくれる。特になつは、その手の話題が大好きだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます