第19話

 次の休み時間は移動授業のおかげでまともに話せず、お昼休み以降も僕ら四人で固まるということもなく、ふたりの関係を聞き出すチャンスは訪れなかった。


 そしてあっという間に放課後を迎えてしまった。校舎に人気ひとけが少なくなったいまこそが、僕の悩みを解消する最後のチャンスタイムだろう。


「雄二、そろそろ帰ろうぜ」


「図書委員の仕事はない? あるなら賢一くんとふたりで待っているけど」


「う、いや……今日はないよ。だから大丈夫」


 うん――と頷きそうになってしまった。確かにもう一度ふたりが恋人のように愛し合っている現場を押さえれば、確実な証拠となる。だけどそれは余計に、僕らの距離が遠ざかるだけで、なんの証明にもならない。


 ふたりと話せなかったぶんだけ漠然とした不安や焦燥感が募っていて、それはいまにも爆発しそうだった。ここに居るのがバカらしくなって、気を抜けば逃げ出してしまうかもしれない。そうならないために、僕は秘策を用意した。


「あら、あなたたちもこれから帰るの? せっかくだし、あたしも途中までご一緒していいかしら?」


「あ、ゆき! 良いよ、一緒に帰ろっ」


 教室に残っていた五反田さんが加わり、四人で帰ることになった。なつが同意したのに、僕も賢一も異論はない。三人よりも四人のほうが楽しいからだ。


 教室を出るときに、五反田さんと目が合った。互いに目配せをして、賢一となつが隣同士になったのを見計らい、僕らは一先ずチャンスを窺うことにする。

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