第14話
賢一となつがプレイする前に始業のチャイムが鳴って、お開きになった。
「弐宮くん。先ほどのことだけれど……」
先生が黒板に書いたものをひたすらノートに写す作業を授業と言ってもいいのか悩んでいるときに、また小声で五反田さんが話し掛けてきた。
「ああ、別に良いよ。僕が良いところを言えなかったのが悪いんだし」
「なんのこと? あたしはただ、ふたりに気付かれないように探りを入れてみたことを話そうとしただけよ」
「……ああ、そっちね」
先ほどのビンタゲームのことを気に病んで謝ってくれたのかと思って、先走ってしまった。とても恥ずかしい。まともに顔を合わせられない。
そういえば五反田さんは、普段の言動がおかしいこともあるけど、基本的にはやさしい人なんだった。僕なんかのために帳尻合わせでゲームを考案するほどに。
「先ほどの説明で、ビンタゲームは恋人同士で盛り上がるゲームって言ったじゃない? そのときにふたりの顔を見比べてみたのだけれど、どうも初々しい恋人って感じじゃなかったから、本当に付き合っているのかな、と疑問に思ったわ」
「それって、ふたりが付き合っていないってこと?」
仮に彼女の言ったことが本当だとして、昨日僕が見たあの光景は嘘じゃない。確かにふたりは抱き合ってキスをしていた。あれで付き合っていないはずがない。
「あの揺さぶりだけで恋人じゃないとは言えないけれど、なんだか恋人って感じがしないのよね、あのふたり。何というか、女の勘ってやつかしらね」
きっとそれはふたりが、隠れて付き合っているからだ。恋人という雰囲気を匂わせないのも、僕が映らないところで、人知れず愛し合っているからだ。
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