第13話

「とまあ、このようにビンタゲームというのは、仲の良い男女あるいは恋人同士でやると盛り上がるゲームになっているわ。この学校で流行るといいわね」


「だったら、わたしたちが流行らせようよ! 幸いなことに、まだ誰もビンタゲームのことを知らないみたいだしさ。ふたりがやっていて、楽しそうだったし」


 僕が一方的にビンタされるだけの時間に、楽しさを見出したなつの神経を疑う。この、【ルールの穴を突けば相手を殴り放題にできる地獄のゲーム】が本当に流行ったら、ある意味でこの国の破滅は免れないだろう。


「うーん。でも流行らせる必要はないんじゃないか? 盛り上がると一概に言っても、ビンタで相手を傷つける訳だし、教育的に良くない気がするぞ」


「もー。賢一くんは頭が固いなあ。電子ゲームだらけで、身体を使わないコミュニケーションゲームが衰退している時代だからこそのビンタゲームなんだよっ!」


「なるほど、それは一理あるな。最近はスマホとかのゲームばかりで、小さい頃にやっていた遊びが絶滅しているかもしれない」


 奇妙な説得力を持った反論で、賢一の正論は論破されてしまう。確かになつの論理も間違ってはいないけど、だからといってビンタに収束するのはおかしい。


「で、残りの否定派は弐宮くんだけなのだけれど、ビンタでは満足できない? だったら、お互いの身体が密着し合うツイスターというのがあるのだけれど」


 補足説明として五反田さんは、密着し過ぎてお互いのあそこが結合してしまうセッ○スというゲームもあると言ってきたけど、素直に聞き流しておいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る