第8話
「ところで、弐宮くん。先ほどの発言だけど、あなたをひとりにさせてしまったとはいえ、ちょっと攻撃的すぎるんじゃないかしら。あなたは、どう思う?」
「いや、まあ……はい。僕も言い過ぎたのかなと思います」
「でしょう? なら、謝罪してくれないかしら。あたし、こう見えてもガラスのハートなのよ。あのときはポーカーフェイスを気取っていたけど、涙目だったわ」
「それは嘘だよ、さすがに。あんなに核心を突いた発言をしておいて、涙目になる理由が分からないよ。むしろあの状況は僕が涙目になるところだもの」
だって、信じ切っていた人にぜんぶ説明されたようなものだ。幼馴染と親友と、それに僕が禁断の三角関係にあるなんて、些かネタバレが過ぎる。
「異論は認めないわ。そうね……ここはひとつ、お互いにビンタで手打ちにしましょう」
「それって、単純に五反田さんがビンタされたいだけだろ。どうして僕を巻き込むんだよ?」
「そんなの、決まっているじゃない。ひとりでやるSMより、ふたりでやるSMのほうがなんかこう……楽しいからよ。どちらも経験したことはないのだけれど」
まったく彼女の言っていることは意味が分からない。でも彼女が言うように手打ちにしなければ、このやりとりも堂々巡りだ。仕方ないので僕らは互いにビンタし合うことにした。
先生の話を黙って聞いているはずの教室に、そしてふたつの乾いた音が木霊した。ぱちん。バシン。女の子の顔を叩くのはこれで最後にしたい。痛い。
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