第3話

「ふたりとも、どうしたの? こんな道の真ん中で」


 またもや背後から声がした。聞き覚えがある。間違える訳がない。なつの声だ。


「み、三沢。いや、なに……ちょっとした雑談をだな」


「ふーん、まあいいけどさ。それより、どうして待ち合わせ場所に居なかったの、雄二。10分くらい待ってたんだけど……」


 そんなの、決まっている。会いたくなかったからだ。何が楽しくてふたりと一緒に学校に行かないといけないのだ。賢一たちと会ってしまった以上は言い訳のしようもないけど。


「今日は図書委員の仕事で早く行くんだよ。連絡するの忘れてたね、ごめん」


 息をするように嘘を吐く。単体でなら問題はないけど、ふたり揃っている場合だと、どこを見て話せばいいのか分からない。早めに話を切り上げて学校に行きたい。


「それならそうと、早く言ってくれれば良かったのに。わたしたちも着いていっていい?」


「いや、もう急ぐからふたりはゆっくりおいでよ。じゃあ、僕はこれで」


「あ、おい! 雄二!!」


 引き留めようとする賢一の声を無視して僕は、ふたりの歩く速度よりも早いスピードで、学校までの道のりを進んでいく。図書委員の仕事はないけど、ふたりと教室で顔を合わせる時間を少しでも短くしたいので、図書室に入り浸ることにする。

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